7月1日、ソニーが赤字のパソコン事業から撤退し、投資ファンドの日本産業パートナーズに事業譲渡したことで再出発する「VAIO株式会社」の設立会見が開かれた。

VAIO新会社の前途多難<br />ソニー赤字事業の“余生”VAIO株式会社の設立会見に多くの報道陣が集まったが、新しい商品のお披露目はなかった
Photo by Naoyoshi Goto

 数年前には世界出荷台数1000万台を目指したほどのグローバルブランドだが、ビジネスとしては限界に達していた。2013年度の売上高4182億円に対して、営業損益は917億円(事業収束費を含む)と大赤字で、ソニーの家電部門の“お荷物”の一つになっていた。

 その現実を見据えた結果、極小の国内専業パソコンメーカーとして生き残りを図ることを選んだわけだ。

「VAIOの遺伝子を忘れず、人の気持ちに突き刺さる、一点突破の発想でものづくりをしたい」

 会見でそう訴えたのは、過去にVAIO事業部の企画部門などに在籍していた経験がある関取高行新社長。そのポイントは、かつては高価でも飛ぶように売れたVAIOの良さを復活させるため、ユニークで個性的な高級機種に絞った事業の再構築だという。

 新会社はビジネスの規模では約20分の1にまで劇的に縮小することになる。昨年度の年間出荷台数の実績は約560万台だったが、新会社では15年度に30万台超という販売目標を立てる。

 そのため、これまでVAIOの事業部があった長野テック(長野県安曇野市)を本社拠点として開発から生産までの一切を運営。グローバルで約1100人いた社員の人数も減らし、国内240人体制に圧縮した。

「困難がなければ、VAIOは進化しなかった。だから、また、きっと」

 来場者に記念品として配られたパソコンをかたどった名刺ケースには、18年間のVAIOの歴史を彩る名機種の写真と共に、復活に向けた熱いメッセージが書かれたカードさえ入っていた。