「年収1000万以上」だけじゃない!
多くの職が残業ゼロのシンガポール

前回の記事で「シンガポールでは、サービス残業は基本、ない。」と紹介したところ、記事を読んでくださった方々から、シンガポールの残業について聞かれるようになった。

 その頃ちょうど日本政府が“残業代ゼロ制度”と呼ばれる「ホワイトカラーエグゼンプション」の導入について、新たな方針を決めたせいだろう。

 日本では先日「ホワイトカラーエグゼンプション」の対象者を「年収1000万円以上」と決めたが、シンガポールでは管理職・専門職だけでなく、事務職、新卒社会人、非正規社員(時給制以外の非正規社員)もホワイトカラーエグゼンプションに近い労働形式にある。

 つまり、シンガポールの多くの職が「残業代ゼロ」の対象なのだ。シンガポール以外の他のアジア諸国においても、管理職以外の専門職・事務職ではかなりの割合でホワイトカラーエグゼンプションを導入している。

日本の「残業代ゼロ論争」にモノ申す!(上) <br />残業ご法度なシンガポールで面食らった僕 <br />周囲と衝突して学んだ「仕事圧縮」のオキテのどかに見えるシンガポールのオフィスビル街にはホワイトカラーエグゼンプションが浸透している

 のどかに見えるシンガポールのオフィスビル街には、ホワイトカラーエグゼンプションが浸透している。

 シンガポールの中小・零細企業では、十分な従業員がおらず、1日8時間以上の労働を強いられる会社もあるようだが、その制裁は「手厳しい」の一言に尽きる。企業は、ある一定時間以上の労働を社員に強いると、人材開発省(MOM/Ministry of Manpower)からクレームが入り、営業ライセンスを剥奪されてしまうのだ。こうしてシンガポールでは、過度の長時間労働は「仕組み上」(ここが大事!)できないようになっている。

 もちろん、長時間労働が必要な職種はある。コンサルティング会社、会計事務所、法律事務所などのプロフェッショナル・ファームや医療関係機関などだ。しかし、このような業界はもともと他業界よりも給与水準が高く、また昇進も早い傾向があるので、ワーカーたちも長時間労働を納得済みで入社、勤務しているため問題はないようだ。