ニコンが脱カメラ依存の姿勢を本格的に打ち出した。メディカル事業などのM&Aに2000億円を投じる計画だが、実現には縮小が続くデジタルカメラで稼ぎ続ける必要がある。

「メディカル事業の中長期の売上高は2000億円を目標にしたい」

 6月17日、東京都内で開かれた中期経営計画説明会。翌週の株主総会での新社長就任を控えた牛田一雄氏は、ニコンの“生まれ変わり”を繰り返しアピールした。

 これまでも、再生医療のベンチャーに出資するなど、健康・医療といった新規事業育成の取り組みは続けていた。とはいえ、過去の説明会では、主力のデジタルカメラや半導体露光装置の話題が中心。医療分野の説明は数値目標などの具体性に乏しく、“添え物”のような扱いにすぎなかった。

 ところが、牛田氏が「ニコンの目指す姿」として真っ先に紹介したのがメディカル事業だった。光学や画像処理などのコア技術は、体への負担が少ない低侵襲の手術や診断に応用できると強調。半導体露光装置のノウハウは、微量のDNAなどを簡単に検出するバイオチップの生産に利用できると、具体的な応用例も取り上げた。

 資金面でも、メディカルなどの新規事業育成のため、2017年3月期までに2000億円をM&Aに投じると明言。今後3年間の研究開発費2200億円のうち500億円をメディカル事業に投下する方針も明らかにした。

 「メディカル事業が今回の経営計画の核である」と牛田氏が宣言した背景には、主力のデジカメ市場の急激な縮小がある。