創業5年で時価総額約2兆円の急成長ベンチャー<br />「UBER」本社で痛感した新交通システムのあるべき姿<br />――米自動運転シンポジウム+シリコンバレー現地速報【中編】UBER本社の受付。この反対側の壁に設置されたタッチパッドで氏名と訪問先を、訪問者自身で入力。出力されたネームシールを胸に張り、担当者を待つ Photo by Kenji Momota

UBERとは何者か?

 UBER。「ウーバー」と発音する。

 サンフランシスコ発のこの新ビジネスがいま、世界の交通ビジネスのなかで、大きな波紋を広げている。今回、同社の本社を日本メディアとして初めて取材した。

 いまから5年前の2009年8月、シリコンバレーのIT関連企業に勤めるトラヴィス・カラニック氏(Travis Kalanik、当時32歳)とギャレット・キャンプ氏(Garrette Camp、同30歳)が資本金20万ドル(本稿執筆時の2014年7月時点換算で約2000万円、以下同)で創業。場所は、彼らの生活のベースであるサンフランシスコ市街地。

 事業の発想について「とても単純明快。サンフランシスコで日頃、タクシーがまったくつかまらなかったからだ」(TV出演等、各メディアでカラニックCEOの発言)。

 市場調査と事業構想を経て、2010年10月、First Round Capitalから1.2ミリオン米ドル(約1億2000万円)を調達し、本格的に事業展開を開始した。その事業とは、リムジンサービス(日本でいう「黒塗りハイヤー」)の効率的な利用だ。

 アメリカではリムジンサービスは個人事業主が多く、お得意先を数人持ち、さらにはウェブ上等で営業活動をしている。だが、日常業務のなかで「空き時間」も結構ある。それを、スマートフォンのアプリ上で一般ユーザー向けに仲介する。これが、UBERの原型(現在の「UberBLACK」)だ。

 このサービス、30代を中心に「気軽にセレブ気分を味わえるし、価格もタクシーと比べてリーズナブルだし、予約操作はスマホで簡単だし」と人気になった。そして、事業は全米規模、さらには海外へと波及していった。ただし、サービスはそれぞれの都市の社会実情を加味して多様化している。その中には、一般人の所有車をタクシーの代用とする「uberX」も含まれる。詳しくは後述するが、そうした各種サービスを各地域向けにカスタマイズすることが、UBERが今、世界各地で急拡大している大きな理由のひとつだ。