歩くことすら困難な難病に打ち勝ち
再びプロのマウンドで勝利を手にした選手

 先週は故障や病気で苦しんだ投手の復活勝利が相次いだ。

 7月27日には福岡ソフトバンクの左腕・大隣憲司(28)が難病に打ち勝ち、オリックスを相手に7回1失点の好投を見せ、1年ぶりの勝利をあげた。難病とは黄色靭帯骨化症。脊髄をつなぐ黄色靭帯が骨化し、下半身のしびれやまひを引き起こす病気だという。罹病の確率は2万人にひとりといわれ、発症すると歩くことも困難になるらしい。球界では元オリックスの酒井勉投手が発症をきっかけに引退。2012年には巨人・越智大祐投手が罹り、復帰に向けてトレーニングを続けているが、一軍登板を果たせていない。最近では東北楽天・星野仙一監督が発症し、手術のため休養した。

 大隣は昨年6月に手術し、つらいリハビリを経て復帰した。監督ならベンチに座っていればいいが、選手、それも投手となれば下半身を目いっぱい使わなければ投球できない。実際、発症した時は歩くことさえできなかったようだ。プロは病気だからといって手加減してくれるような甘い世界ではなく、歩けない状態から、ここまで持ってくるのは想像を絶する苦労があったはずだ。その厳しい戦いの場に復帰し、勝利投手になったのだから立派だ。

 7月28日には、この大隣の同僚だったMLBシカゴ・カブスの和田毅(33)がロッキーズ戦で7回1失点の好投を見せ、渡米3年目にして初勝利を飾った。

 ご存じの通り、和田は日本を代表する左腕である。日本球界(福岡ダイエー・ソフトバンク)在籍中は9シーズンで10勝以上が7度、トータルでは107勝を記録している。この実績を引っさげて、2011年のオフ、MLB挑戦を発表。海外FA権を行使してボルチモア・オリオールズに入団した。本人には活躍する自信はあったはずだし、ファンの期待感も大きかった。

 ところが春のキャンプで左ヒジ痛を発症。靭帯の部分断裂でトミー・ジョン手術を受け、2012年シーズンを登板なしで終えた。翌2013年も完調には戻らず、マイナー(3A)暮らしが続き、オリオールズを自由契約になる。