中国共産党が、前最高幹部の一人である周永康前常務委員を立件すると公表した。25年ぶりに「刑罰は常務委員に及ばない」という不文律を破り、腐敗摘発を進める習近平総書記の狙いに迫る。(在北京ジャーナリスト 陳言)

周永康氏は党最高幹部の中の
最高幹部の一人

 中国社会が待ち望む中、周永康立件が公表された。

 去る7月29日夕刻に、新華社通信は、「周永康の重大な規律違反に鑑み、中国共産党中央委員会は、『中国共産党規約』と『中国共産党紀律検査機関の案件検査条例』の関連規定に基づき、中国共産党中央紀律検査委員会より、本件を立件し取り調べることを決定した」とインターネットで公表した。

 中国共産党の最高指導部は、205名のメンバーからなる中央委員会である。しかし、実際の業務を担当しているのは25人からなる中央政治局であり、さらにその上で7人(胡錦濤時代では9人)の常務委員がすべての活動を指導している。この7人から共産党総書記、国務院首相、全人代委員長、政治協商会議主席、規律検査委員会の主任などが選出され、日本の内閣よりもっと権力が集中している。周永康は胡錦濤時代の共産党中央の常務委員であり、公安警察武装警察などを管轄していた人物だった。

 1989年6月4日の天安門事件で趙紫陽総書記が失脚し、以来25年間、共産党中央委員会常務委員以上の高級幹部は、在任または退職後に立件されることはなかったが、今回は25年ぶりの政変であった。

25年ぶりに打ち破られた
常務委員の特別待遇

 多くの中国人は、1989年6月4日天安門事件前後に、実質的に中国で政権を握っていた顧問委員会の鄧小平主任の言葉を覚えている。

 当時、トウ小平主任(トウの文字は「登」におおざと)は、まず継承者の胡耀邦総書記(当時)を罷免して、その後趙紫陽総書記をも罷免した。立て続けに二人の総書記を罷免したため、国内政局は不安視されていた。トウ氏は「新しい常務委員会は、今後その結束を維持していくべきだ」と常務委員会で発言して、それ以降、在職または退職した常務委員を失脚させ、立件したりしたことはなかった。常務委員以上の役職者は逮捕しないという不文律を25年前に実質的につくりあげ、それによって中国共産党の支配を安定させようとしたのである。