次世代のワークスタイルにおいてIT活用が重要な役割を担うことは疑いようがない。しかしそれは、デバイスやツールの導入だけで実現できるわけではなく、組織運営、意思決定プロセス、人事評価、雇用・就労形態などに関する制度や手法など改革しなくてはならないことが多岐にわたる。

ワークスタイル変革が
求められる背景

 ここにきて、ワークスタイル変革に対する企業の関心は高まりを見せている。ITRが毎年実施している「IT投資動向調査」では、企業にとって重要なIT戦略テーマを問うているが、最重要のみを集計したランキングにおいて「従業員のワークスタイル革新」が2013年の15位から2014年には10位に浮上している。

 これ以外にも「売り上げ増大への直接的な貢献」が昨年から引き続き首位を占め、「顧客サービスの質的な向上」が6位から3位への浮上し、調査開始以来初めてトップ3に位置づけられている。

 こうした動きは企業が、視点を内向き(ITの最適化やコスト削減)から、外向き(ビジネスや業務の変革)へとシフトさせようとしている姿勢の表れといえる。そして、その中でもワークスタイル変革は、IT活用の有用性が高く、全社的なイニシアチブであることからIT戦略として重要性が高いと認識していると考えられる。

 これまでも多くの企業において、ペーパーレス化、会議の円滑化やテレビ会議の導入、フリーアドレスの実施、電話のIP化、コミュニケーション活性化のためのグループウェアや社内SNSの展開など、働き方やその環境を見直すプロジェクトは長年にわたって推進されてきた。

 そして「ワークスタイル」という単語を冠した書籍は1990年代から多数出版されている。しかし、依然としてホワイトワーカーの生産性向上やオフィス環境の改善に対する取り組みは道半ばといわざるをえない。

 多くの企業における組織や働き方は、高度経済成長期の枠組みを維持したままとなっており、これからの競争環境に適したものとはいえない。

 一方ここにきて、ビジネスのグローバル化、雇用のダイバーシティ、組織のトライブ化(本連載【近未来の組織運営とIT】組織と人材の「トライブ化」が企業の情報環境を激変させる)といった組織運営や働き方の前提となるより広範な戦略課題への対応が迫られている。

 さらに、タブレット端末、クラウド型PBX、ビデオチャットやライブミーティング、オンラインストレージといった新たなコミュニケーションやコラボレーションの手段を提供する技術が矢継ぎ早に台頭してきている。

 いうまでもなく、これらの機器やサービスを導入するだけでワークスタイルを変革できるわけではない。しかし、こうした技術革新と企業のニーズの高まりを受けて、積年の課題であるワークスタイル変革を検討するに、機が熟したといえるのではないだろうか。