安倍晋三首相は、南米諸国歴訪中の7月31日、「9月第一週に内閣改造と党役員人事を行いたい」と明言した。

 首相自らが内閣改造日程を予告するなんて聞いたことはないが、そこにはさまざまな思惑があるようだ。

 首相はおそらく、集団的自衛権の行使容認決定で1つの大きな山を越えたと考えているのだろう。

 これからの予算編成と通常国会を見据えて、新体制で臨みたい気持ちは良くわかる。首相も「新たな気持ちで新たな分野にチャレンジしてさらに成果を求めたい」と言っている。“地方創生”と“安保法制”の2つの担当相を新設することも明らかにした。

 また、次の山に登るためには人心を一新する必要があると考えてのことだろう。

 一昨年の年末に発足した現内閣は、同じ顔ぶれで2年近く続いている。これは戦後で最長記録になっているらしい。

 近年は閣僚も1年交代が多くなっているから、入閣待望組の不満もかつてなく蓄積しているはずだ。

「9月第一週」と明言されたから、彼らも批判的な発言や不穏な動きを控えるだろう。

内閣改造に秘められた“もう1つの思惑”

 さらに、首相の胸中には、“再選戦略”の第一歩という思惑もあるだろう。

 特に、この際は石破茂自民党幹事長の追撃を抑える手立てを講じておく必要がある。

 問題は9月の人事が、安倍政権の今後にとってプラスになるか、それともマイナスになるかという点だ。

 不確定要素を挙げると、経済の動向と、拉致問題の行方であろう。そろそろ発表されるはずの4~6月のGDP速報値も、かなりの落ち込みが予想されているから政権にとっては厳しい材料だ。

 石破氏が幹事長を続投すれば、知事選はともかく、来春の統一地方選挙で全国的な影響力を強め、来年の総裁選で首相の強敵になるに違いない。