担当者や管理者の発言は最小限に
現場の自発的な質疑応答を辛抱強く待つ

 このようにスタートしたものの、導入当初は投稿があるたびに、てんやわんやの議論が繰り広げられた。「誰が回答するのだ」「騒ぎが大きくなる前に早く誰か投稿しろ」「会社方針と違った内容だから、管理者が削除しろ」と、夜中に経営陣同士のあいだで電話が飛び交うという始末だった。

 そのたびに、管理者である私は、「様子を見ましょう」と経営陣をなだめ続けた。修正や削除や、担当者や管理者の投稿は最小限にとどめ、現場での自発的な質疑応答や関連する意見が集積されることを、辛抱強く待ち続けた。

 こうして導入直後の不安定さは徐々に収まっておき、数ヵ月後には、1つの質問や意見に対して、十数件の追加質問や意見や回答が投稿され、投稿の連鎖が発生するようになった。中には、N社の商品開発部門が、ここでの現場の意見の集積を参考にし、予定した新商品のスペックを変更したという事例も発生した。

トップダウン一辺倒は組織の破滅のもと
ボトムアップを支える仕組みを作れ

 読者は既にお気づきと思うが、この仕組みの目的は、水面下にある不満や懸念を顕在化させることに加えて、対立構図を解消することにある。統合後の方針を打ち出すN社(つまりは強者)と方針を受けるE社(弱者)という二極の対立構図でコミュニケーションをとっていたのでは、いつまでたっても統合は進まない。

 これは何も統合会社だけの問題ではない。多くの会社でマネジメントと非マネジメント、方針立案部門と方針実行部門といった具合に、力関係がはっきりとしているがゆえに、強者が弱者に何かを押し付けるというような構図は、枚挙にいとまがない。しかし、弱者は必ず不満を溜め、強者の足を引っ張り、じわじわと追いつめるものだ。

 対立を解消するためには、上下関係の構図を脱するコミュニケーションが必要となる。つまり、力関係でいうと弱者側のE社内で知恵を出す、非マネジメントが工夫する、方針実行部門が試行錯誤する、ということだ。その中でこそ、懸念を解消するソリューションが生み出され、その結果、対立が解消されるのである。

 つまり、「統合する会社にのみ知恵あり」「本社にのみ知恵があり」という発想から、「統合される会社に知恵あり」「現場に知恵あり」という理念に基づくものであり、「トップダウン」経営から「ボトムアップ経営」への転換であり、「表面的合意」から「本心からのコミットメント」の度合を高めるためのものである。わが国におけるM&Aにおいては、こうした配慮と仕組みが特に有用であると考える。

「統合しましょう」「一体運営しましょう」などというスローガンは意味をなさない。統合する側やマネジメントが手間暇かけて世話を焼き続けるのではなく、メンバーが面白がって使いたがる、自動生成的な仕組みを導入することが、はるかに効果的だ。その仕組みが、N社、E社にとっては、“2ちゃんねる”の仕組みだったのである。