しかし、雇用分野での改革の本命ともいえる「限定正社員」の議論が混迷し、正社員改革に正面から取り組むことが難しくなったため、やや周辺的なテーマである労働時間規制の見直しを目玉に据える結果になったという印象を払拭できない。

根幹は正社員改革 
求められる「欧米型限定正社員」の導入

 本来、労働時間規制は正社員改革の一環である。日本型正社員の特徴は、実は仕事内容・勤務地・労働時間が選べないという点にある。この日本型正社員を前提とする以上、労働時間規制を外すと働き過ぎのリスクが高まる。

 そもそも日本型正社員を規範とする現在の雇用制度は、①正規・非正規の二重構造、②女性・高齢者・外国人の能力活用の不十分さ、③ワークライフバランスの困難等の原因になっているほか、④ホワイトカラーの低生産性の原因にもなっている。

これらを解決するには、仕事を自ら選ぶことができ、職務範囲が明確ゆえに労働時間の自己管理ができる欧米型正社員の働き方を導入する必要がある。より具体的には、高い専門性を前提に役割期待が明確な米国型のプロフェッショナル正社員や、企業横断的に技能が標準化された職種における欧州型の熟練技能正社員である。

 これらはともに、日本型のように仕事内容が決まっていないわけではなく、職務範囲が限定されているという意味で「限定正社員」である。

「欧米型限定正社員」と
労働時間規制の関係

 こうした「限定正社員」であれば、労働時間規制の在り方も変わってくる。米国型のプロフェッショナル正社員とは、特定職務の文字通りプロとして市場価値のある高いスキルを持ち、高報酬を得ている人材タイプのことである。したがって、いわゆる「ホワイトカラー・エクゼンプション制度(労働時間規制適用免除制度」」が適用されてよい。

 欧州型の熟練技能正社員は、そもそも所定外も含めた総労働時間の上限規制が厳しく、健康配慮の観点からは問題がないが、使用者側からみた柔軟性に欠くという課題があった。そこでドイツでは、「労働時間口座制」として、時間外労働を“貯蓄”して後に労働時間を短縮することのできる制度が導入された。総労働時間を一定の範囲内に抑えながら、人件費負担を増やすことなく、時々の労働時間を柔軟に決める制度といえる。