柳川 つまり、料理をつくる理由や食材の歴史などを情報として溜め込むってことですね。

松嶋 あと僕が必要としている経験は、旅です。クリエイティビティ=移動距離だと思っているので。とにかく移動しないと、クリエイティビティは生まれてこないですよ。どれだけ移動して、どれだけ視点を変えて、いろんな景色を見るかが大切です。

 僕は若い頃からいつも相手の立場から自分がどう思われるか、10通りの見方をしようと思っていました。それはクリエイティブのなかでもすごく大事なことだと思います。原宿のことを福岡から見るのと、ニースから見るのと、パリから見るのと、ニューヨークから見るのとでは、景色が全然違います。そうして客観的になれることもクリエイティブになるための1つでしょう。同じ場所にいてはクリエイティブになれません。日本人なら東京だけにいてもクリエイティブにはなれませんよ。

 旅は、新しいものを取り入れる手段でもあるし、旅をすることによって距離をおいて違う見方をすることもできます。僕はその両方を上手にバランスとりながら、いつもメニューを考えています。

柳川 新しいアイデアを生み出そうとすると、生み出すことばかり考えてしまって、それだけを見つめてしまったり、情報を取り入れることを疎かにしがちです。いろんな知識を持っていないと、アイデアは生まれないという良い例ですね。

 失礼な言い方かもしれませんが、シェフの方がこうして街の歴史や食材の流れついた経緯をご存じなのは、とても新鮮な驚きがありました。それが新しいものを生み出す原動力というのは、すごくおもしろいと思います。

※中編は8月27日(水)に公開予定です。