興味深いのは、これらの取り組みが効率化を図るCRMなどのシステム的発想の延長ではなく、顧客との接点と密度を上げていくために行き着いたハイタッチな関係性強化の発想が軸であるという点である。奥谷氏の言葉を借りれば「情報をBtoCで一生懸命出していく時代は終わり、顧客と距離感を縮めてお客様にそっとシンプルなメッセージを一つ一つ渡していくと、思いがけないインフォメーションループができたり、アプリによって頻度高く情報を広げてもらえる。Webというスキルを使ってよい商品、よい環境、よい情報がより実現できるようになってきた、これがオムニチャネルなのだと思います」と。

 昨年、良品計画では、旧来型ワンウェイメディアであるチラシをついに廃止し、その原資を「顧客時間」を増やすためのアプリ開発に振り向けているとのことだ。

顧客コニュニティとのコラボレーションでブランド体験を深化させる
――メルセデス・ベンツのケーススタディ

「日本ブランド」は顧客との新しい関係を構築できるか?――オムニチャネル時代のブランド戦略©Nacàsa & Partners Inc

 オンラインやスマートフォンの活用によって、機能や効率を越えた個人との結びつきを強める無印良品に対し、「リアル」を駆使して、顧客とのシームレスで濃密なブランド体験を深化させるブランドもある。その代表がメルセデス・ベンツである。

 ファッションウィーク東京。ギャレット ポップコーン ショップス。グランツーリスモやマリオカートといったビデオゲーム。ラテアートのチャンピオンや、ミシュラン二つ星のシェフ。有名なスポーツ選手、アーティスト、無数の若手ミュージシャン、そして、若い生活者たち。自動車ブランド、メルセデス・ベンツが現在コラボレーションしている相手は、自動車の垣根を越え多岐に渡る。メルセデス・ベンツはこうした他者との協働によって、若い顧客の共感を得ることに成功している。