ワークスタイル変革においては、オフィス環境、雇用・就労形態、ITツールなど多岐にわたる領域を包括的に検討することが求められる。検討するにあたっては、経営課題と技術シーズの両面における長期的視点に加えて、大胆な仮説を想定してみることも有効なアプローチといえる。

ワークスタイル変革の検討アプローチ

 前回の「ワークスタイル変革を考える(前編)」では、ワークスタイルを個人の仕事の進め方やチームでの仕事の進め方といった狭い範囲ではなく、組織と個人の関係性や組織・制度のあり方を含むより広範な概念として捉えるべきだと述べた。

 また、Web会議システムの導入やタブレット端末の展開といった具体的な施策を目的とするのではなく、組織力の向上による競争優位性を獲得といった、より長期的かつ包括的な目的を設定することが重要であると指摘した。

 それでは、このように広範なワークスタイル変革に取り組むためには、どのような進め方が求められるのであろうか。

 ワークスタイル変革を検討するにあたっての取り組み方として、基本的には従来の業務改革などで用いられる課題解決型のアプローチが王道の進め方といえる。

 課題解決型のアプローチとは、まず現状をしっかりと把握し、一方で将来のあるべき姿を描く。そして、現状とのギャップから戦略課題を導き出し、それを解決するための施策や実現手段を考えていくという進め方である(図1)

 ワークスタイルに対する企業としての方向性や取り組むべき課題を明確にするためには、現状(現在、どのような働き方をしているか)を分析することと、将来像(将来、どのような働き方を実現したいか)を明確に描くことが不可欠といえる。

 これらのギャップが明確でないまま具体的な施策や実現手段に傾注すると、機器やサービスの導入が目的となったり、問題に対して対症療法的な取り組みに終始することとなる。

 一方で、パイロットプロジェクトなどの段階ではそのようなアプローチが有効な場合もある。すなわち、最新の機器やサービスという技術シーズを起点として、「この技術を活用したら、この業務がこのように変わるのではないだろうか」といった仮説を持つことである。

 例えば、特定のスタッフにタブレット端末を配布することで、課題解決型のアプローチだけでは気がつかなかったような斬新な活用シーンが現場から発想されることもあるだろう。ただし、そのような場合であっても、多岐にわたる部門や全社への展開に踏み切る際には、王道に立ち返って現状を分析し、将来のあるべき働き方を描くことを怠ってはならない。

ワークスタイル変革を考える(後編)<br />――経営者には長期的視点と大胆な仮説が必要