最近の経済ニュースは、兆円単位、場合によっては、兆ドル単位の話が多いので、今回の150億円程度の話はいかにも小さく聞こえる。しかし、アメリカのAIGやシティグループの損失に比べると金額が小さいとはいえ、関係者には相当に深刻な話だ。金融機関にカモにされている大学の話である。

 11月19日付けの各紙報道によれば、駒澤大学が昨年度から始めたデリバティブ(金融派生商品)取引による資産運用で、約154億円の損失を出していたことが分かった。問題のデリバティブ取引は、「金利スワップ」と「通貨スワップ」の2種類で、昨年度、外資系の金融機関2社と契約していたという。ところが、2007年後半以降の金融危機の影響などを受けて、時価が一気に値下がりし、今年3月末の年度決算時点で、評価損は53億円を超え、その後も含み損が増え続けたため、結局、損切りを決めたという(損切りが出来た事には拍手を送りたい)。

 この損失の穴埋めのため、駒澤大は世田谷区内にある野球部グラウンドなど複数の土地建物を担保に、みずほ銀行から110億円の融資を受けることを決めたらしい。駒澤大学は、幸い、いい場所にいいものを持っていたので、救われた。

 昨年度末での同大の資産総額は約940億円。うち土地建物などの基本財産は580億円、現金預金は127億円というから、運用資金は結構あったのだろうが、それにしても大きな損失だ。

 似たような話は他からも出ている。11月21日には、立正大学で148億円の含み損があることが明らかになった。国債、地方債、社債、投資信託だけならまだしも、豪ドルを組み込んだ仕組み債までも抱えていて、3月末時点で96億円だった評価損がやはり金融市場の混乱や円高の影響で拡大した模様だ。しかし立正大は各種金融取引について、「満期保有を基本としているため、最終的な損失額は確定していない」と言っていて、現時点では評価損を計上していない。後述するが、こうした認識には大いに心配な点がある。

 19日付の朝日新聞の記事によると、全国約650の大学・短期大学のうち、少なくとも75大学がデリバティブ取引を行っていたという(日本私立学校振興・共済事業団調査。2005年度の集計と古いため、数はさらに増えている可能性もある)。むろん、このご時勢に資産運用で苦労していないところはないだろうが、率直に言って、大学は金融機関(特に外資系)のいいカモになっている。