約20%の節電効果!北九州市スマートコミュニティ <br />課題は政府補助が終わる来年度以降の“自走” 東田地区内にある地域節電所。翌日の気温などから、東田地区内の電力需要を予測し、供給力を確保し、制御する Photo:DOL

スマートコミュニティなどのエネルギーに関する「スマート○○」の実証実験は日本各地で行われているが、それが私たちの生活をどのように変化させるのか。海外の事例はいくつかあるが、イマイチよく分からないという人がほとんどではないだろうか。しかし、北九州市が行っている実験は、目に見える形で結果が出ており、「スマート○○」についてイメージしやすい事例だ。5年間で行われてきた実証実験の概要と結果、今後の課題についてレポートする(取材・文/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

節電効果をもたらした
「ダイナミックプライシング」とは?

「今年の夏も実験中で、具体的な節電効果はこれから分析が必要だが、2012年夏からの実験で“ダイナミックプライシング”によって需要の形が変えられるということは確実に言える」(北九州市環境局環境未来都市推進室)

 ダイナミックプライシングとは、電力需給の状況に応じて、電力料金を細かく設定すること。電力使用量がピークとなる時間帯の電力料金を高く設定し、使用量を減らす(ピークカット)ことを狙い、逆に電力の使用量が極端に少なくなる夜中などの時間帯の電気料金を安く設定して、安い時間帯での電力利用を促す(ピークシフト)。消費者の節電を促し、結果として電力使用の波が平準化され、使用総量を減らしていくことを狙っている。

 北九州市は2010年4月、政府の「次世代エネルギー・社会システム実証実験」を行う地域に選定され、5年間にわたって38事業、累計163億円の予算がつけられている。その実証実験として、ダイナミックプライシングが行われてきた。

 2012年の夏(6月から9月)と冬(12月から3月)、2013年の夏(6月から9月)に行われた実験では、電気料金をキロワット時50円から150円まで5段階に設定。夏は最高気温30度以上、冬は最低気温5度以下の予報が出た前日に、翌日の電気料金が変動する旨を実験に協力する世帯に通知した。

 その結果、ピーク時間帯の料金を変動させた世帯の電力使用量と、まったく変動させない世帯の電力使用量を比較すると、約20%の節電効果が見られた。

 2013年冬からの実験では、料金段階を3段階にし、設定料金も変えた。今年の夏、いまもまさに実験中で、結果はまだ出ていないものの、過去の実績から今年もピークカットとピークシフトができるのではないかと期待が高まっている。