子どもの性の不一致を心配する親たち
オカマのことをフィリピンではバクラという。このバクラは一般の会社にもいるし、不動産営業などいたるところで普通に働いている。とりわけビューティパーラーやダンスインストラクターはほとんどがバクラだ。彼ら(あるいは彼女ら)はバクラであることを誇りにさえ思っているようだ。バクラであることが就職には影響しないという、なんともおおらかな社会だ。

オナベのことはトンボイという。髪を短く切って少年のような格好をしているが、胸が膨らんでいて、独特な雰囲気をかもし出している。彼らはセキュリティ・ガードなどの男性的な職業につくことが多い。かの花街の雄「ミスユニバーサル」に出演していたダンサー集団ローズ・アン・グループの女の子たちのボーイフレンドはほとんどがトンボイだったそうだ。

現在、フィリピンでナンバー・ワンのコメディアンであるバイス・ガンダはバクラだ。本人もバクラであることを売りにして、舞台でも地で通す。それが大いに共感を呼び、圧倒的な人気を博している。知名度においては芸能界いちばんといっても過言ではない。ちなみにバイスは英語で「副」という意味で、ガンダはタガログ語で「美」という意味。日本語にしたらどうなるか、いい言葉が思い浮かばないが、まさにバクラの人気者にふさわしい名前だ。

いつも女の子に間違えられるKIAN(仕事のパートナー・ジェーンの息子)が、バクラになるのではないかと、つい先日までママ・ジェーンは心配をしていた。フィリピンでは子どもができると、この性の不一致がないかどうか親は心配する。赤ちゃんは男も女もないのでわからないが、物心つくころになると、ママは肉体的な性と精神的な性が同じかどうか目をこらして観察するのだ。
KIANの場合、最近のあまりにもスケベな行動にママ・ジェーンの心配は吹き飛んでしまったが、今度はセックス・マニャック(異常性欲者)ではないかと、心配は絶えない。

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(文・撮影/志賀和民)
著者紹介:志賀和民(しが・かずたみ)
東京出身。東北大学大学院修了後、日揮(株)入社。シンガポールにをかわきりに海外勤務を歴任。1989年日揮関連会社社長に就任しフィリピンに移住。2007年4月PASCO(サロン・デ・パスコ)取締役。
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