上海のオフィス市場が冷え込んでいる。07年末には4.6%にまで落ちたオフィスの空室率(A級オフィス(*1))も、08年第3四半期には11.2%にまで上がった。

 08年10月以降、上海の日系企業の業績もたちどころに悪化した。「顧客である自動車や家電のビッグネームが予算を削り始めた」と上海の不動産仲介会社が嘆くように、どの企業もコスト削減の対象にするのは駐在員の住宅予算であり、オフィス賃料だ。

 過去4年間の平均空室率は5.8%。2000年以降、上海のオフィス市場は拡大一辺倒をたどってきた。社員数の増加とともに、たちどころに手狭になるオフィス。上海の日系企業も上海経済の成長の勢いに乗り、業務拡張とともに年々オフィスを拡大させてきた。

 だが08年10月に入ると空気が一変する。「オフィスの移転は少なくなり、契約を更新してとどまるケースが増えてきました。あれほど強気だった貸し手も、今は賃料をかなり下げています」(前出の不動産仲介会社)。オフィスを移転させれば内装工事も伴う。その費用もバカにならない今、企業は現状維持を選択する。

 金融街として知られる上海市浦東新区、ここに林立するオフィスビルの第3四半期の賃料は7%に下落した(「第一財経日報」)とされているが、取引の現場からは「08年12月は同年5月に比べて20%も落ちた」と悲鳴が上がる。そんな縮小ムードの中で、森ビルの101階建ての世界最高層(*2)ビル「上海環球金融中心(以下SWFC)が10月25日に正式開業した。

SWFC好調の理由は
「ライバルがいない」から?

 延べ床面積38万1600m2、101階のうちオフィス部分は62フロアを占める。SWFCが上海のオフィス市場にもたらした床の広さは22万6900m2と、東京ドームの面積のおよそ5つ分に相当する。

 08年8月28日、森ビルはSWFCの内部公開に先立ち記者会見を行ったが、この時点で日本企業11社、欧米企業6社、アジア・その他の企業8社、合計25社の入居が決定していた。当初は「上海環球金融中心」というビル名のごとく、証券会社や投資銀行などの金融機関を欧米7割、日系3割の比率で集める予定だったが、今のところ欧米系はその比率に達していない。金融機関は、日系では銀行2行、証券1社、投資コンサル1社、保険2社、欧米系では銀行3行、アジア系では銀行2行、ファンド1社となっている。