2013年度に過去最高業績を更新し、中長期経営計画を2年前倒しで達成した野村不動産。さらなる成長に向けての考えを聞いた。

野村不動産ホールディングス社長 中井加明三 <br />多様な人材を積極登用し、独自戦略で差別化を図るなかい・かめぞう/1950年7月30日生まれ。兵庫県出身。74年関西学院大学商学部卒業後、野村證券入社。 99年常務取締役、2003年野村アセットマネジメント取締役兼専務執行役員、同年野村ホールディングス執行役、09年野村土地建物社長、11年野村不動産ホールディングス社長、12年野村不動産社長兼社長執行役員、野村ホールディングス社長兼社長執行役員。
Photo by Kazutoshi Sumitomo

――不動産市況の足元および見通しはいかがですか。

 アベノミクスにより景気の先行きに明るさが見えてきています。今年4月の消費増税後、若干の反動はありましたが、7-9月期には回復傾向が強まるでしょう。

 例えば、当社で7月に売り出した立川駅前の地上32階建てのマンション「プラウドタワー立川」は、1坪(約3・3平方メートル)当たりの平均販売価格が342万円という価格にもかかわらず非常に好調で、7月に行った第一期の230戸は即日完売しました。

 とはいえ、土地取得価格や建設費の上昇は懸念要素です。特に住宅については、販売価格にコストをどこまで上乗せできるか。消費者の所得が増加するなどの景気好転の実感がなければ、販売価格を引き上げるのは難しく、その結果、業界の成長が足踏みする恐れがあります。

――建築費の高騰はどれほど深刻ですか。

 昨年、建設費について当社のインデックスをつくりました。昨年中間決算後に出した数値では、震災時に比べて建設費が23%アップ。この一年間だけでも約5%も上がっています。

 対策として2013年4月に建設企画室を設立し、ゼネコンとのコミュニケーションを強化しています。例えば、見積もり段階から弊社で作ってゼネコンとすり合わせる。バルクで資材を買い付ける。また数年先までの建設計画をゼネコンに提示して、その需要に見合う職人を手当してもらうなどの長期のコミットメントを行っています。こうした取り組みによって、建設費高騰のカーブが徐々になだらかな上昇になりつつあります。