「健康保険のきかない先進医療は300万円かかるものもあります。昔、加入した保険では、先進医療は保障されないので、早めに先進医療特約付きの新しいタイプに見直しましょう」

 ここ数年、生損保各社が医療保険やがん保険を販売する際のウリにしているのが「先進医療特約」で、保険販売の現場ではこんなセールストークが展開されているようだ。

 先進医療特約は、病気やケガをして国が認めた先進医療を受けたときの治療費の実費を保障するものだ。契約者が支払う保険料は、保険会社によって若干異なるが、おおむね月100円程度。1年間でも1200円だ。

 たしかに、月100円の保険料で、万一のときに300万円の保障も受けられるならおトク感はある。だが、その保険料のカラクリを知っても、安いと思えるかは微妙なところだ。

CMによって植えつけられた
「先進医療=高額な治療」

 医療技術は日進月歩で、日々、新しい治療法や医薬品の研究・開発が行われている。だが、そのすべてが医療の現場で使われるわけではない。期待したほど効果がなかったり、副作用が大きかったりして治療に使えず、研究の段階で陽の目を見ずに消えていくものも多い。

 評価の定まっていない技術や薬が国の審査を受けずに出回ると、国民が健康被害にさらされる可能性が高くなる。そこで、公的な健康保険では、有効性と安全性が認められたものだけを「保険診療」として認め、それ以外の「自由診療」には原則的に健康保険を適用しないことになっている。

 そして、病気やケガの治療中に、一部でもこの自由診療を利用した場合は、通常なら健康保険が適用されて3割負担(70歳未満の場合)でよい検査や手術の費用も、患者は全額自己負担しなければいけなくなる。これが、いわゆる「混合診療の禁止」と呼ばれるものだ。