現在の日本では、6人に1人の子どもが貧困状態にある。なかでも深刻なのは、ひとり親世帯の状況だ。ひとり親世帯の貧困率は2人に1人以上(※ひとり親世帯の貧困率54.6%、2013年国民生活基礎調査 厚労省)にも達している。絶対的貧困ではなく相対的貧困だが、「だから深刻さが少ない」とはいえない。

今回は、シングルマザーの孤立・困難・貧困を「まるごとささえる」活動を展開する「大阪子どもの貧困アクショングループ(CPAO)」代表の徳丸ゆき子氏にインタビューした。「DVをガマンせずに離婚したから」などと特に自己責任論で追い詰められやすいシングルマザーたちとその子どもたちは、今、どういう状況にあるのだろうか?

「なんとか一緒に生きていこう」
子どもの「今」をサポートする活動

シングルマザーの貧困は本当に「自己責任」!?<br />100人調査でわかった母親たちの実態徳丸ゆき子さん
大阪子どもの貧困アクショングループ(CPAO/シーパオ)代表。大阪府生まれ。NPO法人にて不登校、ひきこもり支援に従事した後、2002年より国際協力NGOセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンに所属。国内事業を担当。子どもの社会参画、子どもの貧困、東北大震災復興支援のスタッフを経て、2013年に現団体設立。
Photo by Yoshiko Miwa

「『生き延びることが大切』ということを、言っていかないと。もっと言っていかないといけないと思います」

 知的な表情とシャープな語り口で、徳丸ゆき子さん(43歳)は語る。声には熱さがこもっているけれども、いわゆる「暑苦しさ」は感じない。言葉は明晰で論理的だが、冷ややかさはまったく感じられない。

 現在、大阪市に拠点を置く「大阪子どもの貧困アクショングループ(CPAO)」の代表を務めている徳丸さんは、大阪で起こった2つの衝撃的な出来事をきっかけとして、「子どもと親をまるごとささえる」を活動趣旨とするCPAOを立ち上げた。2つの衝撃的な出来事とは、2010年の2児放置死事件・2013年の母子変死事件だ。

 CPAOの活動内容は、「しらべる(調査・レポート作成)」「みつける(アウトリーチ)」「つなげる(相談事業)」「ほぐす(直接支援・介入)」と多岐にわたっている。また徳丸さんは、前回の「緊急アクション関西『子どもの貧困対策大綱できてんて? ほんで、どうすんねん?』」の呼びかけ人の一人でもある。

「いつも、子どもたちに『とにかく生きよう』と言っているんです。お母さんたちは、プライドが傷つくことを恐れていたり、世間体を気にしていたりするんですけど」(徳丸さん)

 生きたいと望むのは、生き物である人間が当然持っている本能であるはずだ。

「でも、『死ねばいいやん』と自棄を起こす子どもたちも多いし、大人の自殺も多いです」(徳丸さん)

 とにかく生き延びた先に見えるものが希望や尊厳ではなく絶望や屈辱であるとしたら、「自殺を先送りして生き延びよう」と考えるのは確かに難しい。「生きていれば何か良いことがあるかも」と自分に言い聞かせようとしても、必死で口に出したところに「ただの可能性、あくまで『かもしれない』」という冷笑を浴びせる人も多い。その冷笑は、ギリギリのところで持ちこたえている心を決定的に折ってしまうかもしれない。一度そんなことがあると、自分を励ますための言葉を思い浮かべることも、口に出すこともできなくなる。自殺を考えるような状況に追い込まれたとき、筆者はそうだった。

「だから、なんとか一緒に生きていこうと言い続けなくては、夢も希望もなさすぎます」(徳丸さん)

 その重い言葉を、明るく熱く語る徳丸さん。けれども、子どもの貧困は現在進行形の、重い事実だ。

「ええ。貧困には暗いイメージがありますよね。CPAOを設立するとき、『貧困』を入れるかどうか、ネーミングで悩みました」(徳丸さん)