iPhone6とApple Watchが発売されることになり、ネットでもさまざまな感想、論評、絶対に買わないとか買うとかの意見が溢れていてとにかく大賑わいだが、僕はこのApple Watchにアップル凋落の兆しを感じている。まあ、ジョブズが死んでティム・クックが後を引き継いだ時点でこうなることは予想できていたわけだが、それが現実のカタチとなって出てきたわけで、その意味で悲しみは深い。

 アップルは今後、なぜ凋落していくのか。そのことをCSRの視点で語ってみたいと思う。

ジョブズはCSRをバカにしていた?

 そもそもアップルという企業はCSRとはほとんど無縁の会社だった。たぶん、スティーブ・ジョブズという人はCSRにはまったく関心がなかったと思う。というか、むしろバカにしていたのではないかとさえ思う。

 チャリティにも関心がなく、ビル・ゲイツとウォーレン・バフェットがアメリカの富豪たちに呼びかけて、40人から総額20兆円もの寄付の約束を取り付けたアクションのときも、ジョブズは加わっていない。

 そんなジョブズがCEOだった時代には、CSRレポートさえ出していなかった。これは、欧米の大企業としては極めて異例なことだ。環境というか、サスティナビリティにも関心がなく、世界的な環境団体グリーンピースの標的にもされていたし、中国の工場で自殺者が相次いだ時は人権団体からも批判された。

 ある意味、アップルはCSR業界からは「社会的責任を果たしていない」と見られていた。

 それが、ジョブズが死んでティム・クックの時代になって変わった。こちらのブログに詳しく書かれているが、米国環境保護庁の長官をヘッドハントし、環境担当の副社長に据えた。サスティナビリティレポートも出すようになった。ウェブサイトでも、どれほど環境に配慮しているかを伝えるようになった。

 このような動きを、CSR関係者は評価する。僕もまあ、否定はしない。しかし、これがアップルのCSRのあるべき姿かというと、僕は違うと思う。間違っているとまでは言わないが、アップルの本来のCSR、そのあるべき姿はまったく別の方向、別の次元にあると思うからだ。

CSRは何のために必要なのか?

 CSRとは何か――。これは数多くの意見があり、いまだに業界人同士で議論もされているし、そもそもCSRの定義も、メジャーなモノだけでもいろいろある。CSR論者が100人いれば、100通りの意見があると言っても過言ではない。