TEDカンファレンスに登壇したシェフのダンバーバー(TED『魚と恋に落ちた僕』)やアーサー・ポッツ・ドーソン(TED『持続可能なレストランへのビジョン』)をはじめ、諸外国では環境への配慮をはじめ、生産と消費の橋渡し役として料理人は期待され、また活躍しているが、翻って日本の状況は暗い。サスタナビリティまで考えて食材を選んでいるレストランがどれだけあるだろうか、というと心もとない。

 以前、料理の専門誌を読んでいて、ある鼎談が目に止まった。料理人とそれ以外のジャンルから識者を招いての鼎談だったのだが、その席で料理人が「サスタナビリティってなんですか?」と発言していたのだ。言葉すら知らないという現状。困ったことに、この方はそれなりに著名なシェフなのだ。

 問題はマグロだけではない。資源が心配されている魚は他にも多い。鯖だって取り尽くす勢いだし、秋刀魚にだって外国船の乱獲やレジームシフト(数十年単位で潮の流れが変わる現象)による影響など不安要素はある。もちろん、今、いい食材の確保が難しくなりつつある現状があり、良質な食材の価格は上がり続けている。

 結局のところ、我々はマグロを食べ過ぎていたのだ。高級品ではない回転寿司のマグロだって、そう遠くない未来に食べられなくなる。そうしてマグロは富裕層の口にしか入らないものになる。このままいくと食文化は一部のエリート層のものになっていくのかもしれない、とも思う。

国の動きを待っていては遅い
消費者がマグロを守るためにできること

 日本の漁業については一部の養殖などをのぞき、明るいニュースがあまりない。少し前の話だが、北欧から来日したシェフの料理を賞味する機会があった。そこで食べたノルウェー産のホタテ貝に驚いた。身が緻密で、味わいが特別に深い。「ノルウェーは水温が低いので、成長がゆっくり。だからその分、身が緻密で美味しい」のだとシェフは説明した。つまり、ノルウェーでは育成期間を充分にとって、高付加価値の商品をつくっているのだ。

 漠然と日本の魚介類の質は高いと思っていたが、そうとばかりも言えないようだ。例えば鯖である。スーパーではノルウェー産の鯖を買うことができるが、消費者がそれを選ぶのはもちろん「美味しいから」だ。