ガス導管事業の法的分離に
都市ガス各社が反対姿勢

先月26日付け毎日新聞ネット記事によると、政府が都市ガスの小売全面自由化に関連して都市ガス大手3社(東京ガス・大阪ガス・東邦ガス)のガス導管事業の法的分離を検討していることについて、大阪ガス・尾崎裕社長(日本ガス協会会長)が「意味がないし、必要ない」と、事実上反対する意向を示したとのこと。その後、今月1日付け毎日新聞ネット記事では、このガス導管事業の法的分離に関して、東京ガス・広瀬道明社長も「マイナス面が非常に大きい」と、反対する姿勢を示したと報じられた。

 経済産業省が企図している“ガスシステム改革”については、本稿でも問題提起や処方箋提示の意味も込めて、幾度も寄稿してきた(第16回第22回第27回など)。現在同時に進められている“電力システム改革”では既存大手電力会社の“発送電分離”が検討されているが、これに合わせた形で都市ガス販売シェアの7割を占める大手3社について、2019~21年にガス導管事業を別会社化する“法的分離”を義務付けようというわけだ。

 これに対して、尾崎社長は、「(ガス導管は)今の仕組みでも十分公平に使われている」「導管事業を分離することで我々の企業価値が下がり資金調達コストが上がれば(収益力が低下し)導管事業も(利用料値上げが必要になるなど)高コストになって、自由化のメリットを阻害することも起こりうる。逆効果になると思う」との見解を示したようだ。

 広瀬社長は、「都市ガス事業はガス調達から販売まで密接な関係にある。集中豪雨などの異常事態にも対応しなくてはならず、(法的分離で)安定供給は確保できるのか」と疑問を呈したとされる。

 私にしてみれば、何を今さら反対しているのか、としか思えない。これまでの検討過程において、経産省からガス業界に対して“ガス料金規制撤廃という飴”がぶら下げられ、それをガス業界として今回の制度変更を進める上での交換条件にしたような形になってしまった時点で、勝負は半ばついていたのではないか。

 一例を考えると、役所は将来的に内外無差別のインフラ開放をしていくための時限爆弾として、都市ガスのLNG基地の開放を義務付けたいのだろう。今回は、ガス料金規制撤廃まで踏み込むのだから、そのような事業分離の足掛かりの1つや2つや3つや4つは許容しろ、ということ。役所にとって、国会に法案を提出することは大業績になる。もちろん、国会で成立し、施行されるべき制度改革は数多ある。