企業を成長・存続させるためには、企業が進むべき方向性を示し、自社の競争優位を持続させる実現可能な方策(戦略)を打ち出さなくてはならない。経営に関する理解を深め、リーダーシップを発揮することは、トップ・マネジメントだけではなく、企業を支えるミドル・マネジメントや将来のマネジメント層にも求められる。

経営戦略の意義

 戦略にはさまざまな定義があるが、本稿では戦略を「企業あるいは事業の目的を達成するために、持続的な競争優位を確立すべく構造化されたアクション・プラン」と定義する。明確な経営戦略を打ち出すことは、勝ち組の企業になるための条件の1つである。企業が保有する経営資源には限りがあり、選択と集中について考えなくてはならないからだ。経営戦略を策定することにより、何を行い何を行わないか、どのような強みを磨いていくのかが明らかになる。さらに、企業としての方向性をはっきりと示すことで、企業活動を支える内外関係者の共感を得たり、従業員の能力を十分に引き出したりすることが可能になる。

 戦略を策定する場合はまず、どの分野へいかにして進むのかを決める。そして、環境変化や競合企業の動きに対して、自社に最も有利となり、かつ競争優位を持続できる道筋を選択する。このとき、単発の対応ではなく仕組みとして機能すること、実行可能な施策であることも重要だ。これらの要件を満たすのが優れた戦略である。

企業の目的

 戦略策定では方向性を示さなくてはならないが、その前にまず企業の目的を知っておく必要がある。そもそも企業は何のために日々の活動を行っているのだろうか。

 経営者の第一の使命は株主価値の最大化である。欧米では「企業は株主のもの」という考え方が一般的だ。日本でもグローバル化や市場の要請を受けて、IR(インべスターズ・リレーションズ:投資家向け広報活動)の強化や利益重視の経営指標の導入など、企業経営の透明性を高め、株主重視の姿勢を打ち出そうとする企業が増えている。しかし、株主だけを重視していればよいというわけでもない。たとえば、株主価値の最大化のためには顧客にとっての価値を最大化する必要がある。顧客に支持されない企業は業績を伸ばすことができず、企業価値や株価を高めることもできないからだ。