円安ドル高・株価の上昇で市場が沸く中、その恩恵を全く受けない生活保護利用者たちの住環境は、さらに劣化するかもしれない。2014年11月にも、住宅扶助・冬季加算の引き下げ方針が打ち出される見通しであるからだ。

今、生活保護利用者たちは、どのような住環境で生活しているのだろうか? 現状がさらに引き下げられると、この人々の生活をどのように変える可能性があるのだろうか?

生活保護受給者の「健康」を求める
厚労省の研究会が新たに発足

 今回は、住宅扶助と冬季加算の現状がどうなっているのかについて、特に東北の住宅事情・冬の暖房事情を中心に述べる。住宅扶助・冬季加算をはじめとする加算は、社会保障審議会・生活保護基準部会で2013年秋より見直し(実質的に削減)が進められてきており、2014年11月には結論がまとめられる見通しだ。

 住宅扶助と冬季加算について述べる前に、厚労省の気になる動きを一つ紹介しておきたい。2014年9月8日、厚労省・社会・援護局長の私的勉強会として発足した「生活保護受給者の健康管理の在り方に関する研究会」だ。

配布資料を見ると、

「生活保護費は伸び続けており、うち約半分は医療扶助である」

 という問題提起がある(3ページ)。8ページには年次推移のグラフがある。2012年度、生活保護費総額(国+自治体負担分)約3兆6000万円のうち、医療扶助は約1兆7000万円、比率にして46.5%であった。

 同年、生活保護世帯のうち43.7%が高齢者世帯、30.8%が障害者・傷病者世帯であった。合わせて74.5%は「医療ニーズが高い」と考えられる世帯であったわけである。また、これらの世帯の人々の中には、精神科病院等への長期入院患者も含まれている。以上を考えたとき、医療扶助は「高すぎるから削減する必要がある」と単純に言えるかどうか、筆者は大きな疑問を感じる。

 このことは厚労省も認めているようだ。資料12ページ~14ページには、医療扶助が大きな割合を占める理由として、

1. 医療を必要とする60歳以上の高齢者が多い
2. 若年層にも医療を必要とする人々が多い(筆者注:20~59歳の生活保護世帯のうち37%は、保護開始理由が傷病)
3. 一般的に長期治療が必要とされる者が多い(筆者注:ただし入院患者の少なくとも30%は精神疾患。長期治療が必要でも、長期入院の必要性は疑問)

 が挙げられている。