日本人3人がノーベル物理学賞受賞の快挙
喜んでばかりもいられない中村発言の意味

 2014年のノーベル物理学賞を日本人研究者3人が獲得した。3人の研究者は長年にわたって地道な努力を続け、「20世紀中には無理だろう」と言われてきた青色LED(Light Emitting Diode=発光ダイオード)を見事につくり上げた。  

 今回の受賞以外にも、いくつかの分野でノーベル賞級の研究はかなりあると言われており、わが国の高レベルな研究開発力の面目躍如というところだろう。そうした研究を支える産業界にとっても、やってきたことが間違いでなかった証拠になるはずだ。

 一方、今回の受賞に関連して、あまり喜べない部分があることも忘れてはならない。受賞者の1人である中村修二氏は、すでに米国の国籍を取得しているという。また、研究の場所もカリフォルニアの大学だ。

 同氏は今回の受賞の喜びを語ると同時に、わが国の研究開発に係る問題点を指摘している。1つは、日本の研究者は組織内での自由が制限されている点だ。特に企業内の研究者は、上からの要請によって研究に制限がかかることが多いため、海外のような研究の自由が得られないという。

 もう1つは、わが国企業は新しい技術を世界に売り込むマーケティング力に欠けている点だ。以前から、「技術で勝ってもビジネスで負けている」という指摘があった。中村氏の指摘はまさに、わが国企業が抱える弱点を言い当てている。

 そうしたわが国の状況を諦めて、中村氏のような優秀な研究者が米国に行ってしまった。今回の受賞をきっかけとして、研究開発のサポート役を担う企業経営者やアカデミズム関係者は、現状打開に向けて意識を変えることが必要だ。

 企業で実際に研究開発に携わっている人たちに、研究の環境などについてヒアリングしてみた。彼らの話を総合すると、「おおむねやりたい研究をすることはできるが、中村さんが言う通り自由は縛られることが多い」というのが実感のようだった。