「モノのインターネット」という日本語訳で語られるIoT(Internet of Things)。パソコンやスマートフォンだけでなく、身の周りにあるあらゆるモノが、埋め込まれたセンサーによってインターネットにつながり、それらが相互に情報交換する状態や技術を言う。今後、産業界にはIoTが浸透し、産業構造そのものを大きく変えると言われる。いったい、どのような変化が訪れるのか。一般のビジネスパーソンはどのようにその変化を迎え、対応すればいいのか。ガートナーの池田武史・リサーチ ディレクターに話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

「監視するからカネください」
という短絡思考ではダメ

常識を疑い、新たな“ストーリー”を考え出せ <br />IoTは業界構造をひっくり返す産業革命をもたらす<br />――池田武史・ガートナー ジャパン リサーチ ディレクターいけだ・たけし
ガートナー ジャパン リサーチ ディレクター。大阪大学基礎工学研究科修士課程修了。企業のITインフラに関してネットワーキングとコミュニケーションの観点を中心に、アナリストとして活動。コミュニケーションの研究、ネットワーク・インフラの企画、データセンターおよびインターネット接続サービスのビジネス推進、ソフトウェア開発のマーケティングなど、幅広い分野の経験を基に、ITインフラの在り方に関する支援・助言を行っている。 
Photo:DOL

――IoT(Internet of Things:モノのインターネット)が注目されていますが、産業界にどのような変化をもたらすのでしょうか。

 言葉自体はこの1年程度で馴染んできたように思います。ただ、短絡的に考えている人も多いのではと感じます。最近もIT業界で盛り上がるワードとして、モバイルやビックデータ、クラウドなどがありましたが、同じような傾向があります。「“ビックデータください”と顧客に言われた」なんていう笑い話もあります(笑)。

 短絡的というのは、こういうことです。たとえばIoTを使った遠隔監視システムのサービスを開発したとしましょう。サービスを提供する側は、「IoTによって遠隔監視システムという付加価値が生まれた」と思ったわけです。付加価値が生まれたということは、「ユーザーからカネが取れるじゃないか」と考える。そこで、その分、ユーザーには高い料金を請求する。つまり、「遠隔監視システムを付けましたので、30%割り増しです」と。それで、果たしてユーザーはお金を払ってくれるか。払いませんよね(笑)。監視にユーザーはお金を払わない。