IFRS(国際会計基準)の適用が刻々と迫る現在、中小企業の経営者たちは不安を抱えている。IFRS導入支援サービスを手がけるITベンダーやコンサルティング会社には、「導入時のコストを安く済ませる方法はないか」「適用を免れることはできないか」といった相談が相次いでいるという。大手企業さえも苦心しているIFRSの導入は、中小企業にとって大きなインパクトになる可能性が高い。経営者にとってまず必要なのは、自らが置かれた現状を正確に把握し、効率的な対策を練ることだ。河﨑照行・甲南大学会計大学院長が、現状を詳しく解説する。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

河﨑照行
かわさき・てるゆき/甲南大学会計大学院長、教授、経営学博士。1950年生まれ。山口県出身。79年神戸大学大学院経営学研究科博士課程単位取得。教鞭を執る傍ら、日本会計研究学会理事、日本簿記学会理事、税理士試験委員、公認会計士試験委員などを歴任。著書多数。

――日本では、2015年、または2016年にIFRSの強制適用が始まるが、取り組みを始めているのはまだ一部の大手企業に限られている。中小企業にとって、導入準備にかかる負担は大きい。IFRSには、中小企業向けの例外措置はないのか?

 上場企業であれば、原則として全てIFRSが適用される。また、非上場の中小企業であっても、社会的説明責任が大きい場合は、適用を推奨される可能性がある。

 よい例が、昨年7月、IASB(国際会計基準審議会)によって公表された「中小企業版IFRS」(『IFRS for Small and Medium-sized Entities』)だ。

 これは言わば「簡易版IFRS」というべきもの。内容的には、IFRSのフレームワークを基礎として、中小企業に関連しない項目や複雑な会計方針のオプションが削除されている。

 適用対象となる企業は、「社会的説明責任のない企業であり、かつ一般目的財務諸表を公表する企業」となっている。