手斧を持った男が園児の保護者を脅すという、恐ろしい事件が国分寺市で起こった。きっかけは保育所の騒音トラブル。脅迫事件、訴訟も起こっている保育所トラブルの報道は、待機児童など保育に関する議論が活発になっている今だからこそ、増えているのかもしれない。そう考えると、皮肉な話ではある。騒音トラブルに対して保育関係者が考えるべきこと、そして地域で子どもを育てることについて住民が真に考えなければならないこととは何だろうか。(取材・文/プレスラボ・小川たまか)

整備が急がれる一方問題視される騒音
保育所を取り巻く皮肉な現状の背景

 住宅街で、男が手斧を振り下ろす……。

 思わずゾッとしてしまう事件が国分寺市で起こったのは、10月1日のこと。暴力行為処罰法違反の疑いで逮捕された男の主張は、近所にある保育所の「子どもの声がうるさい」というもの。犯行の前日には市の保育課に電話をかけ、このままであれば「子どもの首を切るぞ」と職員に告げていたという。

 ここ最近、保育所での騒音による訴訟トラブルがいくつか報道されていたところで起きた、この事件。「ついに逮捕者が……」と感じた関係者も少なくないのではないだろうか。

 待機児童問題に端を発して「保育所」に関連するニュースがここ最近、注目を集めがちだ。

 東京都の調査によれば、住民からのクレームによって防音壁を設置したり、遊戯時間の短縮や変更を行ったりした自治体は、公立保育所だけでも21団体あったという。また、神戸市や東京都練馬区では、認可保育所が住民から騒音に関して訴訟を起こされている。

 さらに今年の夏には、千葉市の認可外保育施設で保育士が子どもの口に食事を無理矢理詰め込むなどして逮捕されるという、ショッキングな事件もあった。施設の経営者は人手不足に悩んでおり、退職されることを恐れて保育士の行為を止められなかったとも報じられている。