定年時に1000万円以上残る
住宅ローンが「老後貧乏」のはじまり

 老後の生活を安泰なものにできるかどうかは、老後資金の多い・少ないだけではなく、60歳以降も住宅ローン返済が続くかどうかも重要なポイントだ。現在住宅ローンを持っている人は、完済年齢が70歳前後のケースが多い。借りた当初は「定年のときに退職金で一括返済すればいい」と気軽に考えていたかもしれないが、60歳時点のローン残高を試算したうえでの判断ではないだろう。

 退職金が2000万円の見込みで、定年時に住宅ローン残高が1000万円だとすると、一括返済すれば老後資金には1000万円しか充てることができないことになる。退職金以外の貯蓄が少ないと、老後資金は1000万円+α……やや心許ない金額だ。

 60歳時のローン残高がわからない人は、次の方法でざっくり試算してみよう。たとえば、月10万円程度の返済額、70歳完済のローンだとすると、60~70歳までの10年間分の返済額は1200万円。このうち利息分を差し引いたとして、60歳時点では1100万円前後残ることになる(あくまで簡便法の計算である)。

 同様に75歳完済ならば、15年間で1800万円返済するので、60歳時には1500万円前後のローンが確実に残るはずだ。定年時に1000万円以上残るのは「良くないケース」だと認識してほしい。もう少し正確に知りたい場合は、借りている銀行で試算してもらおう。

 借りた当初は退職金で一括返済のつもりだったのが、退職間近になると「一括返済はしない」と気が変わる人が少なくない。理由は、考えていたより退職金が少なく、ローンが多いから。全部返してしまうと老後資金に回せる額が少なくなることに気がつく(退職直前で気がつくのは遅すぎるのだが…)。「60歳以降も雇用継続で働くのだから、働いている間は毎月返していけばいい」と方向転換をする。

 また「返済中に死ぬとローンは団体信用生命保険でゼロになるのだから、今一括返済しなくていいかも。長年の疲れがたまっているから、70歳までに死んでしまうかもしれない」と考える人もいる。現在、深刻な病気なわけではないのに、根拠もなく「死ぬかも」にかけるのはやめておこう。