習・安倍会談、中日関係の悪化に終止符 <br />戦略的互恵関係確立は依然として“茨の道”<br />――在北京ジャーナリスト 陳言およそ3年ぶりに正式な首脳会談に臨んだ安倍晋三首相(左)と習近平国家主席(右)。両者の表情は硬く、特に習近平国家主席から笑顔は見られなかった。だが、この後に行われた韓国の朴槿惠大統領との中韓首脳会談の際は、別人のような満面の笑みで握手をした Photo:REUTERS/AFLO

11月10日昼過ぎから、習近平国家主席・安倍晋三首相会談のニュースは中国の各ポータルサイトのトップに掲載された。およそ3年ぶりの中日首脳会談は、中国でも大きな注目を集めていた。会談の開催はこの3日前の7日、両国政府が4項目からなる合意文書を発表して決定。会談は事前に予測されていた10~15分程度よりも長い約25分間に及び、中日関係のこれ以上の悪化に終止符が打たれた。本当の戦略的互恵関係の構築には時間はかかるだろうが、関係が正常化していくことは間違いないだろう。習・安倍会談について中国メディアはどのように報道し、また中国の専門家たちはどのように反応し、今後の展望を予測したのだろうか。(在北京ジャーナリスト 陳言)

不可能を可能にした
4項目の合意文書

 まず、中日関係を悪化させた要因を整理しておこう。要因は二つあり、一つは領土問題であり、もう一つは歴史問題である。

 領土問題については、日本国民もここ数年、尖閣諸島(中国名:釣魚島)の領有権問題について中日両国が争っていることから、その概要については広く知られている。尖閣は日本が実質支配しており、中国、台湾また香港の人がその島々で暮らすことは起こり得ない。

 2012年の日本政府による尖閣諸島の国有化は、それまで中日関係のなかであまり問題ではなかった事項、すなわち領土問題を顕在化させることになってしまった。この問題は両国のナショナリズムを大きく刺激し、両国民の感情の対立などをもたらした。

 領土問題は存在しない、また存在しているとそれぞれの主張が正面衝突し、領土問題で鋭く対立する中日の現実が世界中に知れ渡った。こうした状況が、中日関係を大きく後退させたことは間違いない。

 歴史問題については中日の間で認識の差があった。国家のために戦死した国民に尊崇の念を表すことはどの国にもあり、中国も同様である。しかし、靖国神社にはA級戦犯が祀られており、日本の現役の首相がそこへ参拝に行くことは、中国の一般市民が理解できることではない。

 首相の靖国参拝によって、中日関係がどのような影響を受けるか。それは小泉政権時代、小泉首相が靖国神社参拝を行った後に起こったことを思い出せば、誰でも分かることだ。ところが、2013年12月26日、安倍首相は正式に靖国神社を参拝した。

 その4日後の30日、中国外交部の記者会見で秦剛スポークスマンは、「安倍首相はA級戦犯を参拝し、東京裁判をひっくり返そうとしている。日本軍国主義の対外侵略戦争と植民地支配の歴史を讃えている。そのような日本の指導者に対して、中国人民は当然歓迎せず、中国の指導者も彼と面会することはありえない」と発言した。当時の中国のテレビでは、繰り返しこのコメントを放送していた。