“さばのアップルパイ”を生んだ奇跡の港町 <br />脂ノリ日本一の「八戸前沖さば」がスゴイことになってた「八戸前沖さば」の水揚げ風景

 日本有数の水揚げを誇る青森県・八戸港。サバはその多くを占める魚だ。

 八戸は本州における最北端のサバの漁場。北緯40度30分に位置する八戸港では、秋の早い時期から冷涼な海水に育まれ、身の締まったサバが水揚され、脂のノリも抜群だ。

 平成20年よりブランド化された「八戸前沖さば」は、脂のノリが日本一といわれている。トップシーズンに八戸前沖で漁獲される600g以上のサバの粗脂肪分は、30%に達するものもある。さらにその脂は身全体に入り、肉でいえばまさに霜降り。いわば「サバの大トロ」ともいえる味わいを堪能できる。

 大分県の関さば、宮城県の金華さば、高知県の清水さば、長崎県の旬サバ……、日本各地にはブランドサバがある。

 じつは筆者は、さばファンの団体「全日本さば連合会」広報担当として「サバジェンヌ池田」名義で活動を行っている。活動の一環として、日本各地のサバの漁獲量が高い町を訪ねる機会も多い。

 いまやブランドさばの代名詞でもある「関さば」に続け! とサバのブランド化を試みる産地も多いのだか、じつはサバのブランド化はなかなか難しい。

 サバは「当たり前の魚」。身近すぎるのだ。

 産地ではサバは冷遇されがちだ。ふんだんに水揚げされるエリアでは、サバは「値段も安く、価値のない魚」。サバより高い値がつく魚はたくさんほかにいるわ、毎日食卓には当たり前のように存在するわで、「サバにスペシャル感を求める」という機運が高まらないらしい。「サバじゃなきゃダメ!」とはならないのだ。

 そんななか、町をあげての展開に取り組み、ブランドを形成し、認知を広げている八戸前沖さばは近年における、成功例だ。

「ありがたみのない魚」だったサバが
青森に負けないための“起爆剤”に!?

 八戸前沖さばを全国にPRするべく取り組みを行っているのが、「八戸前沖さばブランド推進協議会」。八戸前沖で漁獲されるサバの食味を含めた品質の高さを証明するとともに、地域ブランド形成に向けた活動を推進するために、平成20年に水産、観光、飲食店などが一体となって結成された。八戸前沖さばの魅力を市内外に発信し、観光誘客促進や水産業振興など地域経済の活性化に貢献することを目的に、さまざまな活動を積極的に行っている。

 協議会会長である武輪俊彦さんは、八戸前沖さばの魅力をこう語る。

「夏の間を北海道沖で過ごし、プランクトンが豊富な北の海で丸々と太ったサバは9~10月頃に南下しはじめます。この時期に獲れる八戸前沖のサバは脂肪が身に入り、旨みが格段に上がります」

 しかし八戸のサバも、他産地同様、獲れすぎるばかりに「地元ではまったくありがたみのない魚でした」と武輪さんは語る。新鮮なサバは地元に多く出回るが食卓に「青空のごとく」当たり前にたたずむ存在。