ソーシャルネットワーク・サービス(SNS)は、結局フェイスブックの一人勝ちで終結するのか。

 いや、そう考えるのはまだ早い。アメリカでは、フェイスブックに対抗するビジネスモデルを携えた新しいサービスがいくつか生まれているからだ。

 それらは、フェイスブックのビジネスモデルやプライバシーの扱い方に異を唱えて生まれたもので、仲間とコミュニケーションする方法は確保しながら、フェイスブック的でない方法でそれを可能にしようとしている。

 どんな方法なのか、それを見てみよう。

実名主義を放棄して
広告も表示されない「エロー」

「実名放棄」か、「稼げるSNS」か <br />“ポストフェイスブック”を狙う2つの新勢力「エロー」のトップページ(http://www.ello.co

 まず、「エロー(ello)」がある。エローは、フェイスブックがユーザーのデータを売り物にしていることに対抗して考えられたサイトだ。

 通常のSNSでは、そこで捉えられるユーザーの行動、好み、交友関係のデータが商品だ。つまり、ユーザーは喜んで自分の日々のあれこれを書き込んでいるつもりでも、裏側ではそれを広告業界やデータブローカーに売ることで、SNSは収入を得ている。つまり、商品はユーザー自身なのである。

 エローは、そうした従来のSNSのあり方に批判的で、プライバシーを護るために、ユーザーに実名を求めることもなく、ユーザーのデータも収集せず、さらに広告も表示しないという。利用は無料なので、収入は今後他の方法で得られるように考えるとのことだ。

 現在は、特製Tシャツなどを売っているのだが、エローのチームは、もとからプログラマーの集まりである。これからエローの周辺におもしろいサービスを作って、それを有料化するということも考えられるだろう。

 エローは、すでにベンチャーキャピタルから550万ドルの投資を得ており、それを元に運営している状態だ。また、Bコーポレーション(公益法人)としての認可も取り、儲けを最大化することを第一目的とせずに経営が続けていけるような体制を整えている。

 エローへ大きな注目が集まったのは、今年9月のこと。フェイスブックが、実名ポリシーをふりかざして、一部ユーザーのアカウントを閉鎖してしまった時だった。それらのユーザーの多くは、ドラッグクイーンやゲイなど実名を明らかにできない人、あるいはアーティストなど芸名で打ち出したい人らだった。当然彼らは抗議した。

 後に実名ポリシーには変更を加えたものの、当初フェイスブックはそれに対抗。実名ポリシーこそ、そうした人々へのサイバーいじめを防ぐ策だと主張したため、多くのユーザーがフェイスブックを離れてエローに移ったのだ。ピーク時では1時間あたり3万1000人の新規登録があったという。