また、相続税についても、農地には納税猶予制度がある。納税猶予とは、相続人が取得した農地で引き続き営農するなら、相続税の納税を猶予するという特権である。

 三大都市圏の特定市の場合、「生産緑地」と市街化区域外の農地では生涯適用されるが、市街化区域内の農地では適用がない。適用条件を勘違いしていたら、大変なことになりそうだ。

 納税猶予が認められれば、事実上、相続税を免除されるのと同じことを意味する。他業種では絶対に考えられない。まさに農家だけに認められた優遇措置といえるだろう。

 しかし、農家にとっての最大の特権は、別にあると田中さんは考えている。

埼玉県内を走る圏央道。建設工事に伴う用地買収で"農地成り金"が続出している
Photo:JIJI

「最近うちの周りでは圏央道の工事が進んでいて、持っていた農地が用地買収されて、農地成り金になった農家がゴロゴロいる。けっこういい金額の提示があったらしいよ」

 農地という巨額の現金に化ける可能性がある“打ち出の小づち”を格安の保有コストで持てること。これこそが農家の最大の特権だと田中さんは言うのだ。

 実際にここ最近、農地の転用期待から、農業をしないのに農地を手放さない「土地持ち非農家」が増加している。

 その多くは公務員として地元の役所に勤めつつ、自分の農地が高速道路やショッピングセンターに化けないかと、農地成り金を夢見ている“偽装農家”なのだ。農政改革を推し進める政府には、ぜひとも農家の特権にもメスを入れてほしいものである。