アベノミクスは正しい処方箋だったか?
欧米にも波及する「日本病」の実態

 “日本病”とは、一般的に政策当局が経済対策を打ち続けているにもかかわらず、経済活動の低迷が長期化していることを指す。その背景には、需要が不足がちであるため、どうしても供給が需要を上回ってしまうことがある。

 最近、“日本病”は本家であるわが国以外にも、2000年台中盤の大規模な不動産バブル崩壊後、欧州や米国など主要先進国に波及しているように見える。ということは、“日本病”はわが国経済だけが抱える経済現象ではないと言える。

 その“日本病”に対して、政策当局はアベノミクスという政策を処方した。アベノミクスが本格的に動き出し、約2年のときが過ぎた。その間、株価は2012年11月の底値から約2倍に駆け上がった。

 また、多くの企業が苦しめられた円高は終焉し、1ドル=117円台の円安になっている。それらの要素を見ると、短期的には、アベノミクスは“日本病”の正しい処方箋だったと言えるかもしれない。

 一方、アベノミクスの肝である、規制緩和や制度改革などによる成長戦略の進捗が遅れている。それでは、社会全体の効率化や新しい需要の創出が、期待されたほど進まないのは当然と言えるだろう。

 現在のように、日銀の緊急避難的な金融政策に依存し続けると、最悪のケースでは、需要の回復が進まず景気回復しない一方、日銀の信用力が低下し円の価値が急激に低下する、一種のスタグフレーションに落ちこむことも想定される。

 わが国経済の動きを振り返ると、1980年代後半、株式や不動産を中心にした不動産バブルが発生し、未曽有の好景気を謳歌した。1990年代初頭、バブルの崩壊に伴い、わが国経済は多額の不良債権処理と経済活動の低下に苦しむことになる。