心理学的には、言葉は7%の伝達力しかないといわれています。しかし、文字で勝負する記者に対しては、言葉は大きなメッセージ力を持っています。記者たちからの質問には、一定の法則があります。というよりも、攻め方の癖があると言ったほうがよいかもしれません。

 これに対するコメント対処方法を具体的に説明しましょう。大きく分けてポイントは16個あります。今回の【前編】では8つ、【後編】では8つの重要なポイントをご紹介していきます。

1) 自分の言葉で語る

 記者や一般の人々からの印象をよくする基本は、用意された原稿ではなく、自分の言葉で語ることです。

 メモを用意してあったとしても、肝心なところは必ずメモから目を離し、記者を見ながら語りかける演出テクニックは、最低限身につけておくべきでしょう。

 かつて民主党の菅直人氏が、国会でメモを用意せずに代表質問に挑んだことがありますが、その際には、「メモを持たず」という報道があちこちで流れ、報道関係者からは非常に好意を持って受け止められました。

 自分の言葉で語らない代表格は、日本道路公団の藤井治芳元総裁。「記者会見を開かない総裁で有名」と報道されました。記者会見にはいつも代理人の弁護士が出るのみ。それでいて特定の週刊誌のインタビューを受けています。これでは決して世論からの支持は得られないでしょう。

 言いたいことがあれば、複数のメディアを前にして自分の言葉で語るべきなのです。自分の言葉で語らない人や、自分に都合のよいメディアや記者の前だけで語るのでは、世論からの支持を受けることはできません。

2) 記者のペースにはまらない

 ベテラン記者ほど、相手を追い詰めるような話し方で情報を取るのではなく、柔和な姿勢で情報を取っていきます。

 記者がメモを閉じたからといって、取材が終わったと思ってはいけません。筆を止めてノートを閉じた後に、本当の取材に入る人もいるからです。

 テレビシリーズの『刑事コロンボ』を思い出してください。コロンボは記者ではありませんが、メモをしまって帰る間際にいつも「ああ、すみません、もう1つだけ質問があるんですが」といって真実に迫る質問をしますよね。あのテクニックです。

 また、当初の取材テーマと異なる方向へ話が進んでいくようであれば、「それについては次の機会にしてください。まだ話せる段階ではないから、話せるようになったらあなたに真っ先に話しましょう」と相手を尊重しつつ、打ち切るのがベストです。