日本を訪れる外国人観光客の数が急増している。日本政府観光局によると、1~10月累計の訪日外国人客数(推計値)は、過去最高となる1100万9000人を記録したという。アベノミクスによる円安の進行や、激減していた中国人観光客などの増加がその理由と言えそうだ。興味深いのは、日本人観光客とは異なる彼らの行動トレンドだ。外国人観光客たちは、日本のどこへ赴き、何を買い、何を食べまくっているのか。彼らの恐るべき「景気刺激力」と、時ならぬ外国人バブルにわく現場を詳しくリサーチしてみよう。(取材・文/有井太郎、協力/プレスラボ) 

右を見ても左を見ても外国人だらけ
「外国人バブル」にわく国内の観光地

 なんという外国人の多さだろうか――。

 10月下旬、秋も深まり紅葉の季節に入りつつある日光。週末の午後に東武鉄道日光駅に降り立つと、駅前は観光客でごった返していた。

 人口約8万5000人、栃木県の北西部に位置する日本随一の観光地である日光市には、毎年多くの観光客が押し寄せる。ここにきて一際目立つのが、外国人観光客の多さだ。

 日光東照宮、中禅寺湖、華厳の滝、日光江戸村など有名な観光スポットが周辺に集まり、日本屈指の人気温泉街・鬼怒川温泉にも近いこの地域は、もともと外国人に対応した宿泊・滞在施設が多く、国際観光都市として発展してきた経緯がある。それに加えて1990年代末に「日光の社寺」が世界遺産に登録されてからは、ますます多くの外国人が訪れるようになった。

 しかし、観光案内所の職員によると、「最近の外国人観光客の増え方は例年にも増して顕著な気がする」という。東武鉄道で東京スカイツリーとつながっているため、スカイツリーと日光観光を兼ねる外国人が増えている影響が大きいのだという。50~60代と思しきグローバルとは無縁そうな中高年のボランティアたちが、列を成す外国人相手に英語を駆使して観光案内をする姿を見るにつけ、「ただの国内の観光地ではない」という空気を感じる。

 行楽日和の晴天の日などは、タクシー乗り場に観光客の列ができることも多く、1時間待ちのこともある。「タクシーを貸し切りにして市内の観光地を巡り、1日で数万円落としてくれる外国人もいる」とホクホク顔で語るのは、やっとつかまえたタクシーの運転手だ。