前回は2014年6月3日に公表された公的年金の財政検証結果の概要を解説しました。今の年金額は現役時代の手取り収入の62.7%(これを所得代替率といい、夫婦2人の基礎年金も含みます。以下同様)ですが、今後は政府の想定通りにいっても50%程度まで下がり、想定よりも悪いと35%まで下がる可能性があることが明らかになりました。これだけ聞くと将来が不安になってきますが、例えば現在60歳までの基礎年金の加入期間を65歳に引き上げるなどの適切な制度改正を実施すれば、所得代替率は大きく改善します。このように今回の財政検証では、条件が良いとき/悪いとき、そして制度改正を実施した際の所得代替率を示すことで、将来起こり得る所得代替率を範囲で示したことが一番大きな貢献だと述べました。一方で、前回の話はあくまで制度全体、つまり将来の均衡状態における年金額の議論であって、自分自身の年金がどうなるのかではありません。当然、皆さんにとって大事なのは全体よりも自分の年金でしょう。個人別とまではいきませんが、年齢別の分析結果が6月27日に開催された社会保障審議会年金部会で厚生労働省から発表されています。そこで今回は、この財政検証結果から見えてくるオヤジ世代の将来の年金について明らかにしていきます。

オヤジ世代の年金は減るが、相対的には勝ち組!?

 今後どの程度の年金額を受け取れるのかは年齢によって異なります。標準的なケースEにおいては、現在55歳のオヤジの所得代替率は58.3%、50歳は56.8%まで下がります。良いシナリオであるケースCの場合には、55歳の所得代替率が58.7%、50歳が57.2%と標準的なケースEよりも若干の改善が見られますが、逆に悪い場合であるケースGが実現すると、55歳の所得代替率は57.3%、50歳は54.4%まで悪化します。前回も触れましたが、オヤジ世代にとっても、良いシナリオが実現した場合のプラス効果よりも、悪いシナリオとなった場合のマイナス効果のほうが大きいのです。やっぱり減ってしまうのか、と残念がっているオヤジもいると思いますが、これはまだ“まし”なのです。オヤジ世代はマクロ経済スライド(人口動態のバランスを取るための給付減額措置)の適用途中で受給開始になるため、この程度の下げで済みますが、遠い将来に年金を受け取る若者の年金額はオヤジたちよりも大きく減少してしまいます。今30歳の人が受け取る年金額は、最終的な均衡状態である50.6%まで下がります(標準的な場合)から、オヤジ世代は相対的には年金勝ち組と言えるのかもしれません。