「ほんやくコンニャク」というドラえもんの道具を覚えているだろうか。
 これを食べると、あらゆる言語で自由に会話ができるようになるのだ。

 ほんやくコンニャクが実用化され、世界中の人と自由に話せると世界が変わるだろう。もちろん、学習を重ねれば、頭の中に同様の機能を持たせることができる。だが、あまりにも大変な語学学習には及び腰で、楽をして言葉の壁を越える手がないものかと、夢に見ているのだ。

 NECが翻訳技術の開発に力を入れてきたのも、同じコンセプトからだ。1977年に当時の小林会長が「21世紀の初めには誰でも、いつでも、どこでも顔を見ながら話ができるようになる」という夢を提示したという。

 21世紀を迎えた今。確かに、Webカメラや携帯電話によって、いつでもどこでも顔を見ながらコミュニケーションができるようになった。あとは翻訳というわけだ。

 今回取材したのは、NECが独自に開発した機械翻訳エンジンである。携帯電話をほんやくコンニャクにしようという試みだ。

 このチャレンジには、大きく分けて2つのハードルがある。1つは、翻訳精度の向上だ。パソコンの翻訳ソフトでさえ、正確な結果を得るのは難しい。それを携帯電話でチャレンジしようというのだ。

 もう1つが音声認識だ。しゃべった声を認識してテキストに変換し、翻訳機能に受け渡す。正しく認識できないと、当然だが翻訳もうまくできない。

 だが、いつも持ち歩いている携帯電話で翻訳ができるようになれば、非常に利便性が高い。海外にも特別な道具を持ち歩くことなく、電話1つで会話ができるようになれば、うれしいことこの上ないのだ。