神奈川県知事 松沢成文 特別寄稿<br />「ジャパンパッシングを避けたいなら<br />まず成田・羽田空港をリニアで結ぼう」
松沢成文(まつざわしげふみ)
神奈川県知事
1958年神奈川県川崎市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、(財)松下政経塾に、第3期生として入塾。1987年、県政史上最年少議員として初当選。以後、国会議員をつとめ、2003年3月には神奈川県知事に当選。現在、2期目を務める。

 2010年10月、羽田空港に新たに4本目の滑走路が完成し、いよいよ待望の国際定期便が就航することになる。すでに、国において、各国との航空交渉が進められており、現在、韓国、香港、シンガポールなどの東アジア諸国の他、イギリス、フランス、カナダなどの欧州・北米諸国への就航も決定している。

 成田空港でも、当初の予定を前倒しして今年の10月からの供用開始を目指し、2180メートルの平行滑走路を2500メートルに延伸する工事が進められており、発着容量も年間20万回から22万回に増加する予定となっている。今まさに、首都圏の空港は、新たな時代の国際航空需要を見据えた空港に再生されつつあると言える。

 しかしながら、今後、ますます激化が予想される国際競争を勝ち抜いていける首都圏に発展させていくためには、もっと大胆な空港戦略が求められている。私は、その切り札となるのが、成田・羽田両空港を一体的に運用するための超高速鉄道の整備構想であると、かねてから提唱してきており、昨年度、神奈川県において、その構想についての概略調査を行った。そこで、その結果を踏まえながら、実現化を提案していきたい。

激化するアジアの航空需要獲得競争
日本はこのままでは負けてしまう

(1)首都圏空港の現状

 首都圏空港を巡る現在の状況をみると、アジア各国で大型空港の整備が相次ぐ中で、我が国の首都圏空港がこのままであるならば、ジャパンパッシング(日本素通り)が横行するだろうという危機感を抱いている。

 アジア諸国では今後さらなる空港増強が計画されていることから、我が国の国際競争力を高め、経済社会活動を支えていくためには、その中枢を担う首都圏における空港機能の強化・充実を、決して中長期的になどと悠長に構えるのではなく、重要課題として、最優先で対応していかなければならない。