「クリエイティブな人だから、企画部向き」は間違い
世間の認識とズレる企画部の仕事

 サラリーマン時代。本部の商品企画部で仕事をしていると、現場部署の部長達から

「うちの部の○○くんは企画が得意だから、君のところでどうだろう?」

 と何度も打診された。何のことはない。

「能力の高い社員なのだが、自分や周りの人達と折り合いが悪い。このまま関係が悪化して辞められると困るから、企画部で引き取ってくれないか?」というのが彼らの本音なのである。

 こういった場合、私は大抵「そうですねぇ」とお茶を濁して、丁重に申し出を断った。部下を他部署に押し付けることの是非はさておき、「企画が得意」「企画力がある」と現場の部長が言うほとんどの人は、本部の企画向きではないからである。

 この場合に彼らが言う「企画が得意」とは、他人が思いつかないような新しいアイデアを持っている、いわゆる「クリエイティブ」な人のことだ。良いアイデアを思いつく人だから企画向きというのが、世間一般の認識ではないだろうか。

 しかし、本部の「企画部」の社員に求められている「企画力」とは、そういうものではない。現場の情報を収集・整理して、経営陣の意向も加味したうえで、軸を明らかにして、わかりやすい資料を作り、より正しい意思決定へと導くこと。つまり、事務処理能力が高く、論理的思考ができ、実現可能な選択肢を作る能力なのだ。そのプロセスには面白みや突飛なアイデアはあまり必要ない。「プランニング力」と言い換えてもよいかもしれない。現場と本部で言う「企画」の意味は随分違うのである。