三菱ケミカルホールディングス(HD)が、成長分野である炭素繊維事業の強化に本腰を入れる。

二つの炭素繊維統合で打つ<br />三菱ケミカル“成長の一手”山本巌・三菱レイヨン常務執行役員(左)と龍雅史・三菱樹脂専務執行役員が持つ自動車のトランクのふたも炭素繊維製だ
Photo by Mieko Arai

 現在、三菱ケミカルHDでは、傘下の三菱レイヨン、三菱樹脂で別々に炭素繊維事業を展開している。両社の炭素繊維は見掛けこそ同じ「黒い糸」だが、原料が違っており、出来上がる製品の特徴や用途が異なる。

 三菱レイヨンの炭素繊維は切れにくい強度を持ち、飛行機や自動車、風力発電用の風車などに使われている。業界で主流の原料を使って作られるタイプの製品だ。

 一方で三菱樹脂の炭素繊維は変形しにくい剛性を持ち、人工衛星や産業用機械、橋の補強材などに使われる。三菱レイヨンが手掛けるタイプの炭素繊維に比べ、市場規模は100分の1程度とされるが、三菱樹脂のシェアは71%と圧倒的(三菱樹脂推定、生産能力ベース)だ。「まだまだいくらでも原料が確保できる」(山本巌・三菱レイヨン常務執行役員)状態で、生産余力も十分にある。

 来る4月1日、三菱レイヨンが三菱樹脂の炭素繊維事業を引き継ぐ形で両社の事業は統合される。