昨年末、松下電器産業・日立製作所・キヤノンの3社が、液晶パネル分野で連合を組んでから2ヵ月足らず、水面下で進めていた「液晶パネル新工場建設計画」の骨子が明らかになった。「第八世代の量産」に照準を合わせたこの計画には、松下がプラズマテレビ偏重を転換し、液晶への傾斜を加速させている戦略が、端的に表れている。松下の新・液晶戦略の全貌をあらわにする。

 「松下社内では、液晶パネル工場の立ち上げ作業の実務まで理解している幹部はひと握りしかいない。日立出身のIPSアルファテクノロジ(IPSα)幹部が中心となって、新工場建設に向けて準備を進めている」(日立関係者)

 昨年末、松下・日立・キヤノンが液晶パネル分野で提携、松下は、液晶パネル生産のIPSα(日立ディスプレイズが50%を出資)への出資比率を引き上げ、子会社化することを決めた。この再編劇から2ヵ月足らず、液晶テレビ事業強化へ走る松下の新戦略の骨格が見えてきた。

 これまで、松下は新たな液晶パネルの生産工場(IPSα第2工場)建設に約3000億円を投じる、とだけ説明してきた。近々、公式発表されるが、新工場の建設地は、兵庫県姫路市にある出光興産製油所跡地に決定した。かつて、シャープの液晶新工場の有力候補地に挙げられた場所でもある。

 液晶パネルを切り出すマザーガラズの基板サイズは、「第八世代」が有力だ。第八世代はタタミ3畳分に相当する、2.2メートル×2.4メートルの大きさで、40型台のパネルを効率的に切り出せる。「姫路新工場は42型テレビ向けが主力と考えている」(関係者)

 最大生産能力は、月産150万台(32型換算)を想定している。2006年5月に稼働開始したIPSα第一工場(千葉県・茂原工場)の最大生産能力は月産50万台(同換算)だから、姫路工場がフル稼働すれば一気に生産能力は4倍へと拡大する計算だ。