アベノミクスによる異次元の金融緩和や東京五輪の決定で再開発ラッシュに沸く不動産業界。中でも好調なのが三井不動産だ。日本橋周辺地区での大々的な再開発計画をぶち上げるなど攻勢を強めており、今後、さらなる成長が期待できそうだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

 2014年9月5日、不動産業界で異変が起きた。1980年以降で初めて、三井不動産が時価総額で三菱地所を追い抜いたのだ。

 この日の三井不動産の時価総額は3兆3981億円で、三菱地所は3兆3939億円。両社の差はわずかではあるが、その衝撃は数字以上のものがある。

「丸の内の大家さん」とも称される三菱地所は、東京・丸の内一帯を中心とした資産を所有しており、賃貸用不動産の含み益は約2兆円に達する。片や三井不動産の含み益は1兆2000億円(共に14年3月末)にすぎず、その差が三菱地所の株価を支え、長らく業界トップに君臨してきた。

 今回の首位逆転劇は、丸の内エリアの既存ビルを建て替えて収益を稼ぐ三菱地所の事業モデルの限界を露呈した。営業収益に占めるビル賃貸事業の割合は三井不動産の約2倍の4割で、その半分を丸の内が占めている。都心のビル賃料は上昇機運が見え始めているものの、回復は鈍い。

 一方、三井不動産は、後述するが、ショッピングセンターなどの商業施設事業や投資家向けの開発物件の売却事業などが強く、市況改善の影響を受けやすい。

 こうした中、三井不動産の時価総額はわずか2年で3倍へと急上昇しており、両社はすでに拮抗している(右図参照)。

 三井不動産が首位に立ったのはわずか1日のことであり、翌週の月曜日には再び三菱地所が抜き返した。だが、「三井不動産が恒常的に首位となる可能性がある」(大手証券アナリスト)との声も上がり始めている。