私も、NPOやNGOの人、国連の非武装の職員といった人たちをもうちょっと守る分にはいいと思うのですが、他国軍隊の防護というのは、相当強力な武装集団との戦闘行為をするということですから、これはものすごく危ない。自衛隊にとって危ないし、そういうことをしたとたんに、日本も敵だということで、日本人がテロに遭う危険も高まるわけです。

 そこのリスクの判断を、ちゃんとしなければいけない。

──PKOでの武器使用については、集団的自衛権とはまた違う問題となるわけですね。もう1つのグレーゾーンでは、何が問題でしょうか。

 一番のポイントは、警察権で対応するのか自衛権で対応するのかということです。警察権で対応する限り、海上保安庁の力が及ばず、自衛隊が海上警備行動や治安出動で出るとしても、それは警察権の世界です。自衛権の世界になったときに初めて、国家の意志としての武力の行使ができる。相手が単なる漁民であるようなときには、やはり自衛権というわけにはいかない。

 そこで、閣議決定していたら間に合わないから、もっとシームレスに対応できるようにしようというのが、15事例(※3)などで言われている動機なのですが、私は、基本的にそれは大きな間違いだと思います。

 そこは本来、シームレスではない、絶対シームレスであってはいけないんです。必ず閣議決定する、政治がそこに関与しなければいけないことなのです。そんなもの現場の部隊長に任されても、困ってしまう。誰が責任を取ってくれるのか。自衛隊が動けば必ず事態は拡大するわけですから。現場に任せてはいけない、それこそ政治が判断しなければいけないことです。

 私の経験からすれば、閣議決定でも十分間に合うんです。10分でやったこともある。自衛隊も相手が何人いてどんな武器を持っているか分からず、やみくもに行くわけにはいかないですから、情報収集をして、官邸に報告して、認識をシェアしておけばいい。大事なのは、情報をシェアして、政治が責任を持つということです。

“安倍首相がやりたい”からやる

──今後、特に大きな議論となるのは、集団的自衛権をめぐる問題かと思います。

 政府が提示した15事例は、与党のプロジェクトチームで検討していません。その検討が不十分な段階で、閣議決定の文言調整をやってしまっている。

 事例そのものも、軍事的なリアリティがないと私はずっと言ってきました。リアリティがない事例のために憲法解釈を変えると言われても、本当のところ何のためにやるのかさっぱりわからないことになります。

(※3)2014年5月27日に開かれた「安全保障法整備に関する与党協議会」で、政府が現在の憲法解釈・法制度では対処に支障があるとして提示した15の事例。7月1日の閣議決定の叩き台となった。