経営再建中のシャープが、通期で再び最終赤字に転落する見通しになった。主因は、軌道に乗ったはずの中小型液晶パネルの下振れだ。事態の深刻さを受け、銀行団はさらなる経営構造の抜本改革を迫り始めた。

「一時的な調整局面で、今後の見通しは言うほど厳しくないとみています」

「そういう話をしている段階なんでしょうか。もう一度、改革のステージを上げるべきときが来たんじゃないですか」

シャープ最終赤字転落が招く<br />液晶の抜本改革と政府の影屋台骨を支える液晶パネル事業の変調で、シャープ再建の道筋はにわかにかすみ始めた
Photo by Masaki Nakamura

 今から1カ月近く前の昨年末、シャープ幹部と取引銀行との間で交わされたやりとりだ。

 このとき一体何が起きていたのか。シャープ幹部が「調整局面」と言ったのは、スマートフォン向けの液晶パネルで発生した想定外の販売下振れだ。

 昨年、6112万台を売った北京小米科技(シャオミ)や、昨秋に新機種を発表した魅族科技(メイズ)など、シャープは快進撃を続ける中国スマホメーカーとの取引拡大を急速に進めてきた。米アップルに収益を依存する「体質」を改善するためだ。

 2017年度には世界シェアの4割を中国メーカーが占める──。そうした中長期の予測を基に営業攻勢をかけ、14年度下期には取引社数が上期比で約2倍の15社に拡大。受注量も大きく膨らむことで、事業単独の営業利益は上期比2.7倍の550億円に達する絵を描いていた。

 「亀山第2工場の中小型(液晶パネルの)比率は50%を超え、収益に大きく貢献してきている」。14年度上期の業績説明会で、高橋興三社長はそう自信を見せていたが、それもつかの間だった。昨年11月以降、期待していた中国勢からのパネル受注が、需要の伸び悩みで急速に剥落し始めたのだ。