老夫婦を見かけると、たいてい、華僑かそうでないかがわかります。その理由は、華僑の老夫婦の場合、パリッとした服装で年のわりにしっかりとメイクをした妻が背筋をピンと伸ばして先に歩き、夫は妻の後をヒョコヒョコついていくからです。一方、華僑でない、日本人または韓国系の老夫婦の場合は、一般的に手荷物を持たない夫が先に歩き、両手に荷物を持った妻が背中を丸めて後を歩きます。

妻が暇にしていると
ロクなことがない?

 華僑富豪たちの妻の操縦法には、いつも感心させられます。特に意図的にしているのかどうかは不明ですが、一見、妻をたてて大切にしているようではあるものの、実は「負けるが勝ち」という高等戦術を使っているように思えてなりません。

 基本的に彼らが家計を握っているのですが、妻の金銭感覚を育てるために、家計を任せることがあります。また、妻の浪費対策として「夫婦一緒に楽しめる趣味があると楽しいじゃないか」とゴルフを勧めているように思えます。なぜなら、妻に買い物に行かせるとクレジットカードで宝石や高級品を買い、あっと言う間に大金を散財するのに比べると、ゴルフ場で数時間かけて18ホールを回っているほうが金額的には安くつくからです。

 その他の浪費対策として、妻に系列会社を任せます。妻は仕事で外へ出かけるので、見聞が広がります。また、いつも人前に出るため、みだしなみにも気をつけるでしょう。ビジネスに関する情報を得るために新聞を読んだり、経済誌を購読し、ビジネスパートナーとして共通の話題も増えるでしょう。

 また、常にリスク回避を考えている世界のできる男や富める男達は、妻には別の業種を進ませることがあります。万が一、夫のビジネスが倒れても、別分野の妻のビジネスが生き残って新たなチャンスを広げる可能性が十分にあるからです。

 さすが中国4000年の歴史に育まれた知恵をもとに、「妻が暇にしているとロクなことがない」ことを知っているようです。

 また、「女性には口ではかなわない」ことも知っているので、とにかく妻をハッピーにさせておけば「頭痛のタネ」が減るとわかっているのでしょう。冒頭に書いた「妻を先に歩かせる」のも「ボクが後ろからしっかりキミを見守っているからね」と言いつつ、実は、妻を「人の盾」にして自分の身を守っているのかもしれません。

 きっと彼らは愛妻家だとは思いますが、私には上手に妻を操縦しているように思えてなりません。