この連載は、全体的な視点から企業のデジタルマーケティング導入と運用に関する7つの失敗研究を行っているが、今回はデジタルマーケティングの個別機能の実装プロジェクトに取り組む際の前段階と、失敗研究のプロセスを省略することによる失敗を考察する。

失敗に対する3つのパターン

TOC(制約条件の理論)を発案したエリヤフ・ゴールドラット博士は、インタビュー(「イノベーションに必要なブレークスルーは、もうあなた自身が発明している」)で、以下のように語っている。

「愚か者は失敗に学ばず、才人は己の失敗に学ぶ。そして賢人は、他人の失敗からも学ぶのだ。」

 ゴールドラット博士もそうであるように、ユダヤ人の思考パターンには「人」と「行為」を分けるカルチャーがある。日本人は、人を褒めると伸びるというが、人は褒められると傲慢にもなる。そこで、ユダヤ人は人を褒めず、「行為」を褒める。あなたの行為や発言や作り上げたものがすばらしいのであって、あなたがすばらしいのではないと考える。

 逆に捉えると、あなたの失敗とあなたは別ということになり、失敗そのものを直視し、「失敗したあなた」を責めることはない。

 しかし、ゴールドラット博士のインタビューにもあるように、「本当に恐れるべきは、失敗そのものではなく、二度、同じ失敗を重ねること。それは最初の間違いに気付かなかったという証しでしかない。」と、失敗を繰り返す愚かさを戒めている。

「失敗から何も学ばず、同じ失敗を繰り返す人⇒愚か者」
「己の失敗から学び、同じ失敗を繰り返さない人⇒才人」
「他人の失敗からも学ぶ人⇒賢人」

 この失敗に対する3つのパターンのうち、特に「他人の失敗から学ぶ」は、人と行為を分けるカルチャーから生まれるもので、失敗の特性(からくり)を明らかにし(知恵にする)、組織的に積み重なることが重要なのである。

 一般的に、日本では「失敗を許すカルチャーが大切」という表面的な雰囲気の話になり、「失敗そのものを許す」のか「人を許す」のかが曖昧で、致命的な失敗につながる恐れを内在したままの組織がある。

 前提として失敗と人を分けることがベースにあり、失敗の特性(からくり)を明らかにし、同じ失敗を二度と起こさない対策をビルトインすることこそ、本来の「失敗を許すカルチャー」(Nice Try!)につながるのではないだろうか。