元小結・板井――。

 懐かしい響きの名だ。90年代、角界で活躍した板井圭介氏は、当時の「週刊ポスト」の八百長追及キャンペーンの「主役」であった。

 最初は、氏名を明かさない「情報提供者」として、後には顔と名前を明かして、角界に蔓延る不正を世に訴えた。

 その勇気は賞賛に値する。なぜなら、同じ「週刊ポスト」で八百長を告発した別の二人の角界関係者が、相次いでこの世を去ったばかりだったからだ。

 1996年、大鳴戸親方とその支援者は、「週刊ポスト」に告発した後、相次いで命を落とした。二人の死因が肺炎と偶然にも一致したばかりではない。不思議なことに、死亡日も、さらに死亡先の病院まで同じであったのだ。

 1999年、今度は、親方衆と関取の会議の内容を録音したテープが「週刊現代」に報じられ、八百長問題が再燃する。91年に録音されたそのテープの提供者もまた、板井氏であった。

 今週月曜日(10月20日)、筆者は「情報ライブミヤネ屋」(読売テレビ)に出演した際、そのテープの一部を放送で聴いた。

 「優勝とか、大関になろうかという時でも、何回挑戦しても跳ね返される、夜も眠れない、心臓がどきどきする、そういう思いを何回も何回もして勝ち取るもの。これが得がたいものですよね。これを簡単に『カネ』で手に入れるということは、もうこれは稽古も何もしなくていい。絶対にあってはならない故意による無気力相撲が、一部の不心得者によって行われることは許されないことであります」

 「カネ」「仲介」「故意の無気力相撲」――。こうした言葉が二子山親方(当時)の口からついて出る。額面どおりに受け取れば、「カネで仲介した故意の無気力相撲」とは、「八百長」に他ならない。少なくとも筆者にはそうとしか思えない。

 しかし、この期に及んでもなお日本相撲協会は「八百長」の存在を認めていない。角界には単に「故意の無気力相撲」程度しか存在しないと言い続けている。極めて愉快なジョークではないか。

 角界だけに原因があるわけではない。それを報じ続けてきた相撲記者も一蓮托生である。