そろそろ就職活動のシーズンを迎えます。数字に「超」きびしい外資系投資銀行の採用面接の裏側を教えます! 2月19日発売『ビジネスエリートの「これはすごい!」を集めた 外資系投資銀行のエクセル仕事術』の著者・熊野整による連載第1回。

投資銀行の採用では、数字力が重視される
重視されないものは……

 2015年も始まり、そろそろ就職活動のシーズンを迎えます。ずいぶん昔の話ですが、私もモルガン・スタンレーにいたころは、よく大学生の面接をしました。

 拙著『外資系投資銀行のエクセル仕事術』(2月19日発売)では、私の投資銀行での経験を踏まえながら、どのようにチームの数字力を上げるかについて解説しています。当たり前ですが、数字力を上げるためには、数字でしっかり考えるクセをつけなければなりません。たとえば、チームの目標を数値化したり、マーケティング施策を考えるときには利益インパクト、投資対効果をシミュレーションする、といったことですね。

 投資銀行の新卒採用では、数字でしっかり考えられる人か、というのは大きな採用ポイントになります。今回は、私が実際に経験した、外資系投資銀行の試験についてご紹介します。

私がゴールドマン・サックスの<br />面接試験に落ちた理由

 まずは筆記試験。多くの外資系投資銀行はSPIと呼ばれる一般的な筆記試験を導入しています。ところが、私がモルガン・スタンレーにいた頃は、なぜか算数の試験だけ、しかもそれを手作りしていた時期がありました。算数の試験を導入した理由は、外資系はどうしても英語が話せるバイリンガルを採用しがちなのですが、投資銀行では数字が弱いと戦力にならないからです。

 私が作成した問題は、「1万チームが、1 vs 1のトーナメント戦をした場合、優勝を決めるまでの必要な試合数は?」でした。この問題は、回答率は3割くらいで、中には一瞬で答える学生もいました。(正解は最後)

 次に面接試験。面接でも、数字に関する質問が出てきます。例えば、「昨日の日経平均、知ってる?」であったり、会計を勉強している学生に対しては、キャッシュフローに関する質問だったり。

 そして、フェルミ推定と呼ばれる、実際に調べるのが難しい数値を概算で計算する手法をよく面接に使うケースも多いです。例えば、日本にマンホールはいくつあると思いますか?といったものですね。

 ずいぶん昔の話ですが、私が大学生の頃、天下の投資銀行ゴールドマン・サックス(通称GS)の面接で、「日本にガソリンスタンドはいくつあると思いますか?」と聞かれました。しっかり準備していたこともあって、きちんと答えられました。ところが、問題はその後。

GS「…これで面接は終わりです。最後に、何か質問はありますか?」

 そこで、なぜかウケを狙いにいってしまった若造の私(当時大学生)は、

私「あの…貴社がガソリンスタンドを面接のテーマにした理由って…イニシャルが同じGSだからですか?」

 一瞬の沈黙のあと、

GS「あはは、そうかもしれませんね!おもしろいですね!」

 と面接官は言っていたが、目は笑っていなかった(ような気がする)。

 そして、私はこの面接で落ちました。

 大学生のみなさんに伝えたい……面接でウケ狙いはやめておこう!

P.S. トーナメントの問題ですが、例えば2チームなら1試合で優勝が決まります。3チームだと2試合、4チームだと3試合…ということで、1万チームだと9999試合ということになります。理屈で考えるよりも、小さな数字でシミュレーションしたほうが分かりやすいですね。投資銀行で必要な数字力は、「数学」よりも「算数」に近いイメージです。